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なぜなぜ分析では、何を事象にすべきかで迷う人が多い。原則として、自分にとって「最も良くない状態」を事象に選ぶといい。時系列でいえば、最終的な(良くない)結果が事象になりやすい。

 なぜなぜ分析の研修では演習時に、その企業で過去に起きたトラブルを題材にして分析をしてもらう。すると演習の冒頭で、多くのグループがいきなりつまずくことになる。問題とすべき事象に何を選ぶかで迷うのだ。

 メンバーからは様々な意見が出る。「これが一番の問題じゃないか」「いや、こっちも同じくらい重要な課題だ」「手順書がないのが問題でしょ」「管理面の課題もちゃんと取り上げなければならない」といった具合である。

 実際に職場で起きたトラブルの報告書を見て、その記述から原因追究すべき事象を抜き出すだけのことなのに、早くも紛糾してしまう。そんな場面を何度も見てきた。そこで今回は、事象選びについて言及したい。

 まず、問題として取り上げる事象を選ぶときに注意しなければならないのは、再発防止策に抜けや漏れが出ないようにすることだ。以下の事例で説明しよう。

鍵の閉め忘れと強盗のどちらが問題

 家族で外出することになり、午前10時に出発した。午後8時に帰宅してみると、何者かに家中を物色された形跡がある。家族全員で何か盗まれたものはないかを調べた。

 すると現金だけがなくなっていることが発覚した。すぐに警察に通報し、現場検証が始まった。窓はシャッターが下りたまま。窓ガラスも割られていない。防犯カメラを見直したところ、何と不審者は玄関のドアを開け、すんなりと入っていたことが判明。つまり、玄関の鍵が閉まっていなかった。最後に家を出たのは太郎さん。太郎さんが玄関のドアの鍵を閉めなかった。

図 「太郎さんは家を出るときに、玄関の鍵を閉めなかった」を事象にした例
図 「太郎さんは家を出るときに、玄関の鍵を閉めなかった」を事象にした例
どの時点を事象として「なぜ?」をスタートするか(1-1)
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 さて、この話から原因追究すべき事象を1つだけ抜き出すとすれば、あなたは何を選ぶだろうか。三択だ。

図 「家族が出発した後に、玄関の鍵が閉まっていなかった」を事象にした例
図 「家族が出発した後に、玄関の鍵が閉まっていなかった」を事象にした例
どの時点を事象として「なぜ?」をスタートするか(1-2)
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図 「家族が帰宅したときに、現金がなくなっていた」を事象にした例
図 「家族が帰宅したときに、現金がなくなっていた」を事象にした例
どの時点を事象として「なぜ?」をスタートするか(1-3)
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1.太郎さんは家を出るときに、玄関の鍵を閉めなかった

2.家族が出発した後に、玄関の鍵が閉まっていなかった

3.家族が帰宅したときに、現金がなくなっていた。

 1~3のそれぞれを事象にして、なぜなぜ分析してみると、時間的に後の出来事を事象にすればするほど、再発防止策の数が増えていくことが分かる。このことから、抜けや漏れなく再発防止策を出すには、3のように「最終的な結果(この場合は現金がなくなっていた)」を事象にして、「なぜ?」を考えていくのが良いと分かる。

 では、最終的な結果とは何か。言い換えると「自分や自社にとって最も避けたい(あるいは良くない、最悪な)状態」といえる。

 もっとも、分析する時間には限りがある。今日は1だけを考えてみようという判断もありだ。