統合型データ基盤は1つの製品で複数種のデータベースを扱える。ベンダーが提供する「事前パッケージ型」の製品を用いた構成となる。導入や運用の手間がかからないメリットがある一方、柔軟性や拡張性に欠ける面もある。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で重要なデータ基盤には、「分散型」「統合型」「データレイク型」の3つの設計パターンがあります。今回は統合型について解説します。後半では、分散型と統合型の融合に当たる機能についても紹介します。
異なるDBを統合管理
DXを進めていくと、これまでのオンラインやバッチといった処理だけではなく、IoT(インターネット・オブ・シングズ)によるデータの蓄積や分析、AI(人工知能)の活用といった新たな処理が発生します。
こうした処理に対応するには、RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)だけでなくNoSQL、分析DBなど複数の種類のデータベースやオブジェクトストレージが必要となります。
前回紹介した分散型データ基盤は複雑に絡み合った構造をとっていました。複数のデータベースが別々にデータを保持した上で、データベース間でデータを連携したり、データの収集や分析をしたりするといった構造です。
これに対し、異なるRDBMSやNoSQL、分析の機能について統合して管理できる製品が存在します。「事前パッケージ型」の製品です。こうした製品を使ったデータ基盤のアーキテクチャーが統合型です。複数種のデータベースが存在することを意識せず、ワンストップで処理ができます。
設計・導入、運用が容易
統合型のデータ基盤は、エンジニアドシステム(ハードウエアとソフトウエアが一体提供され、セットアップ済みの状態で納入される製品)またはクラウドで提供されます。いずれの場合も、スペックについては事前にいくつか用意された選択肢の中から選びます。例えば容量が足りなくなったら、用意されているスペックの上限までであれば追加できます。複数種のデータベースが導入されて、連携して利用できる状態になっているため、システム構成や方式設計にかかる手間を大きく省けます。
一般的にタイプの異なるデータベースを導入する際は、連携して利用するための設計をして、それぞれの導入手順を用意する必要があります。こうした手順を踏まずに一括導入できるのは大きなメリットです。
納入後に利用できる状態にするまでの作業についても、システムインテグレーターに一括して委託可能です。システムインテグレーターによる導入サービスの充実度が高い点もメリットとして挙げられます。
統合型データ基盤は複数種のデータベースのデータを統合して利用できる仕組みになっています。分散型のように複数種のデータベース間でデータを連携する必要はありません。データ統合のためのインテグレーションコストを下げられます。
データのサイロ化(データがシステムごとにバラバラに配置され、全体的な把握が困難になること)も起こりにくく、データベースシステム全体を1つのツールで管理できるため、運用負荷を下げられます。監視や状態確認、パッチのバージョン管理など、多くの運用タスクを統合管理できるため、インフラ運用の効率化が可能です。