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マスターデータの統合はデジタルトランスフォーメーション(DX)に不可欠である。データ中心のアプローチを取ることでデータの再利用性や安定性が高まる。環境変化に対応するため柔軟性を持ったデータモデルにすることも求められる。

 マスターデータの統合はデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるにあたっての必須条件です。データに不備があると、データを分析した結果が信頼性の低いものになったり、DXの効果を十分に発揮できないことになったりします。DXをスムーズに進めるためには、統合されて使いやすく、信頼性が高いデータが必要不可欠です。

 データが統合されていない場合、多くの企業では、データの利用者がその場限りでデータを統合してDXに取り組んでいるのが実情です。これではDXのプロジェクトを実行するたびにデータ統合を繰り返すことになってしまい非効率です。DXの進展に合わせて会社全体のデータが徐々に統合されていき、DXがスピードアップしていくようにしたいものです。そのために、特に頻繁に再利用されるマスターデータを中心に、業務で扱うデータの構造や流れに着目してシステムを設計する「データ中心」の考え方が受け入れられつつあります。

 データ中心で考えることで、統合されたマスターデータの再利用性や安定性が高まります。そのため長期的で全社的な開発生産性、保守性の向上につながるメリットがあります。DXに取り組むことでプロセスやアプリケーションが変化するスピードが上がると、これまで以上にデータが統合され再利用性が高いことの価値が重要になってきます。

 データ中心で考えることの重要性は以前から指摘されていたものの、広く企業に取り入れられるには至っていませんでした。DXの進展を背景として、再び注目されるようになってきたのです。

図 データ中心アプローチとプロセス中心アプローチのメリット/デメリット
図 データ中心アプローチとプロセス中心アプローチのメリット/デメリット
データ中心は再利用性、安定性が高まる
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データモデルとは何か

 本論に入る前に、マスター統合のテーマで登場する用語や概念を整理します。

 まず、データの構造を表す「データモデル」です。データモデルとは、ビジネスで扱う構成要素とその関係性、データの流れを整理した結果を表すものです。全体を俯瞰(ふかん)的に、概念レベルで抽象化して整理したものを「概念モデル」、詳細にデータ項目を洗い出して漏れなく整理したものを「論理モデル」と呼びます。整理した結果は、ER図(エンティティーリレーションシップ図)などの図で表現します。

 DXにおける概念モデルには、企業内に存在するデータを大づかみで分かりやすく把握して、企画、構想、システム構築の上流工程で利用できるようにするといった意義があります。論理モデルはデータを利用したPoC(概念実証)や、システム構築の下流工程で利用します。

 データが統合されているということは、マスターデータの概念モデル、論理モデルが整備されていて、実装と一致しているということです。データモデルが整備されて初めて、データを設計する担当者の間で共通認識を持てます。