新規事業をはじめ仕事で成果を上げるには、モチベーションを高く保つ必要がある。働く目的の「心技体」を把握し、それぞれの目的を達成できるような目標と期限を設定しよう。事業の方向性と自身の目的達成プランとがひも付けられるとモチベーションは上がる。
本連載は、新型コロナ後のニューノーマル時代に生き残るための新規事業立ち上げガイドラインを、限られたリソースの中で短期間に実際のプロダクトあるいはサービスを生み出すまでの取り組みを通して解説します。
今回から2回にわたって新規事業の立ち上げには欠かせない、モチベーションコントロールとセルフマネジメントについて説明します。新規事業以外の業務でも成果を上げるために参考になる内容ですので、ご一読ください。
「紺猿(こんさる)さん」という事業開発を得意分野とするコンサルタントの元に、知り合いで新規事業を担当する「神姫(しんき)さん」が再び相談に訪れました。新規事業を担当する部門やチームでは、程度の差こそあれモチベーションの低下は避けられません。それをいかに食い止めるか、つまり「モチベーションコントロール」が新規事業の立ち上げやその後の成長に大きく影響するのです。神姫さんの悩みはその点にあるようです。
「神姫さん、お久しぶり。投資判定会議で無事承認されて本当に良かったですね。状況はいかがでしょうか?」
「紺猿さん、その節はお世話になりました。事業そのものはうまくいくこともあれば、想定外で計画を修正しながら進めているものもあります。しかし事業とは別のことで困った問題が起きまして……。今の部署は3人のメンバーがいますが、私以外の2人が仕事に身が入らないというか、正直あまり働いてくれないのです」
「チームを組むときはメンバーに新規事業に取り組む意味合いや難しさを説明して、納得した上で参画してもらうようアドバイスしましたよ」
「はい、その通りにチームを組みました。メンバーも当初はやる気満々でしたが、今ではすっかりトーンダウンしてしまいました」
「原因を聞きましたか?」
「はい。面談したところ、本当に事業が立ち上がるのか、不安のようです。従来の仕事では何かしら成果があり評価してもらいやすかったが、今の業務では成果が見えにくく評価してもらえず、最悪賞与や給与にマイナスの影響があるのではないかと心配しているようです。『神姫さんは私を評価してくれない』『きちんと成果が出るようにしてほしい』と言われています。弊社はテレワーク(在宅勤務)が基本なので打ち合わせはWeb会議サービスを活用していますが、それ以外は会話がほとんどなく、作業の進捗が芳しくありません。半期ごとの面談でモチベーションが大きく低下していることが分かり、慌てている状況です」
「やはり、モチベーションが低下してしまいましたか」
「紺猿さん、私は事業企画を立案した本人で、その重要性を認識していますし自信があるので、なんとか前向きでいます。それでも『元の開発部門にいるほうが幸せだったかもしれない』と思ったり、社長に対して『新規事業担当に指名しておいて放置か』と恨んだりすることがたまにあります」
「おやおや。神姫さんの指摘通り、特にIT系企業では在宅勤務がメインになっているため、密なコミュニケーションが取れず、メンバーの状況が把握しづらいです。気付いたらモチベーションが大幅に下がってしまった、ということですね。そうならないために具体的な手段を講じる必要があります」