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多くの企業が市場環境の変化に直面し、事業変革を迫られている。その状況を打破するには、収益が見込める事業を立ち上げるほか選択肢はない。中堅ソフトハウスのケースを例に、新規事業開発の手順や勘所を解説していく。

 市場環境の変化に直面し、事業変革を迫られている企業は少なくありません。新型コロナウイルス感染症拡大が、その状況に拍車をかけています。

 IT業界も例に漏れません。テレワークなどの新常態に突入し、IT業界ではインフラやクラウド関連の企業は伸びる傾向にある一方、同じIT業界でも旧来型の個別開発つまりSI事業については減少傾向となっており、今後加速すると予想されます。

 ではどうすればいいのでしょうか。筆者は複数の新規事業を立ち上げた後、SIerやソフトハウスでの新規事業立ち上げを支援してきました。読者の皆さんが生き残り、かつ成長するため新規事業に取り組んで頂きたく、そのノウハウを提供できたらと思います。

急に新規事業開発の担当者に

 本連載は架空のソフトハウスのケースを例に、新規事業を突然任された担当者が、限られたリソースの中で短期間に実際のプロダクトあるいはサービスを生み出すまでをステップ・バイ・ステップで見ていきます。

 初回は、新規事業に取り組む必要性につながる顧客の投資や市場の変化などを見ていきます。次回以降は事業の構造と新規事業立ち上げのプロセス、社内プロジェクトとしての進め方やつまずきポイントへの対応、そして最後に投資判断に必要な事業計画書の作成と実事業立ち上げのガイドラインについて扱っていきます。

 「紺猿(こんさる)さん」という事業開発を得意とするコンサルタントがいます。彼の元に、以前付き合いのあったソフトハウスの「神姫(しんき)さん」が訪ねてきました。何か困惑しているようです。

 「紺猿さん、こんにちは。ご無沙汰しています」

 「こちらこそ、その節はお世話になりました。神姫さん、急にどうされたんですか?」

 「実は弊社で新規事業を立ち上げることになり、私が新規事業開発室の室長になりました」

 「すごいじゃないですか。おめでとうございます」

 「いえ、室長と言っても1人だけの部署ですし、そもそも新規事業などやったことが無いので、どうすればいいのか分からず困っているところです」

 「そういうことですか」

 「弊社は大手SIerの開発のお手伝いをする仕事がほとんどで、しかも関係性も悪くないので特に問題はありません。大手SIerとの関係さえしっかり保っていればいいのに、なぜ今、新規事業をしなくてはならないのか理解に苦しみます。それに正直なんで私が担当なのか……。開発部門でしっかり仕事をし、会社に貢献していたという自負もあります。左遷されたとしか思えません」

 「神姫さん、それは違います。現在、SI事業は弱含みで、一定規模の市場は残るにせよ今の市場規模を保つことはほぼ不可能です。新規事業を任せるというのは経営陣が神姫さんを信頼している証拠です。以前のお仕事でご一緒したとき、苦境にあっても真正面から取り組み、エンドユーザーのためにどうすべきかと元請けのSIerと口論されていたことを思い出します」