全5011文字

新規事業に着手する前に、改めて「事業」とは何かを考えよう。まず事業を定義し、基本の構造を確認しておくことは必須だ。ビジネスモデルと言われる基本構造は、3つの要素に分割できる。

 本連載は、新規事業を突然任された担当者が限られたリソースの中で、短期間に実際のプロダクトあるいはサービスを生み出すまでの取り組みをSIerやソフトハウスの例を通して解説します。

 前回は、コロナ禍を経験してニューノーマル時代となった今、なぜ新規事業に取り組む必要性があるのか説明しました。今回から具体的な新規事業の立ち上げの方法に入ります。まずは事業の定義と事業の構造を説明します。

 紺猿(こんさる)さんという事業開発を得意分野とするコンサルタントの元に、知り合いでソフトハウス勤務の神姫(しんき)さんが訪れました。

 「紺猿さん、弊社が新規事業に取り組む必要性も理解しましたし、私自身も新規事業に打ち込む踏ん切りがつきましたが、何から手を付けていいのかさっぱり分かりません。今までは顧客や元請けのSIerから何かしらの打診があり、それに対して提案したり開発したりしてきたのですが、新規事業として何を開発すればいいのか」

 「モノを作ることが事業ではありません。正確に言うとモノを作ることは事業の一部にすぎません。新規事業を立ち上げる最初のステップはアイデアメイキングになります。しかし、やみくもな取り組みはお勧めしません」

 「なぜですか?」

 「神姫さんは、これから新規事業に取り組む上で、まず事業そのものを明確に定義し、事業の構造を理解するところから始めるべきです。取り組む対象を理解しないまま突き進むことは、賢いやり方ではないですよね」

 「確かにそうですね。事業とは何かなど、考えたこともなかったです」

 「これからお話しする内容は、新規事業に取り組む上での基本となる重要な内容です。お時間ありますか?」

新規事業の定義を確認

 事業と言っても様々な形態があります。世の中の企業は全て事業を営んでいるといっても過言ではなく、ひとくくりにすることはできません。ですがそれがなんであれ、興そうとする事業を定義し、その構造を考えることが必要です。

 着手すべき点は大きく2つあります。

 1つ目は、今回見ていく「事業の定義と構造」です。事業を立ち上げる際において、まず事業とは何かを知らなければ、取り組む内容が正しいかどうかの判断ができません。

 2つ目は、事業を立ち上げるためのプロセスとその進め方です。事業立ち上げまでにどんなステップが必要か、そのプロセスが分からなければ、やみくもにやっていてもダメです。また、プロセスを進めるには何をすればよいのか、具体的な作業レベルまで落とし込む必要があります。

 「紺猿さん、事業や新規事業立ち上げは奥が深いんですね」

 「当然です。では、まず事業の定義から始めましょう。神姫さん、事業ってなんだと思いますか?」

 「うーん、何かを作って提供することでしょうか。新製品を開発・販売し、世の中の課題を解決するというのが事業ではないでしょうか」

 「すばらしいですね、すぐにそこまで考察をまとめることができるとは。しかし、それではボランティアです。事業の定義は決まっているものではなくそれぞれの企業で異なるため、神姫さんの会社でもぜひ議論いただきたい。私はIT系企業、特にSIerとソフトハウスでの事業とは次のように定義しています。『事業とは商品やサービスを提供することで対価を得る活動』」

 「最終的に対価を得るところまでいかないと、事業ではないんですね」

 「そうです、企業が存続する上において収益の確保は必須です。その収益の源泉が事業なのです。そのため事業には収益が必須となります。しかし、収益を上げるためには、対価を得る何かを提供しなくてはなりません。そのための『何か』、つまり商品やサービスが必要となります。IT系企業の場合その主な商品やサービスはパッケージソフトやSaaSサービスなので、それらの開発や運用がおのずと必要になるわけです」