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いくら練り込んだ事業企画でも仮説にすぎず、テストマーケティングは必須となる。ターゲット顧客の数社にヒアリングし、仮説を確認するとともに課題の抽出を行う。プロトタイプによるユーザーテストも併せて実施し、スムーズな事業の立ち上げを目指す。

 本連載は、新型コロナ禍後のニューノーマル時代に生き残るための新規事業立ち上げガイドラインを、限られたリソースの中で短期間に実際のプロダクトあるいはサービスを生み出すまでの取り組みを通して解説します。

 前回は、販売プロセスの検討から販売プランの設定方法について説明しました。今回はテストマーケティングについてです。事業企画の中で、強く実施を勧めたいプロセスです。

 紺猿(こんさる)さんという事業開発を得意分野とするコンサルタントの元に、新規事業を任された知り合いの神姫(しんき)さんが再び相談に訪れました。

 「紺猿さん、今、メンバーでビジネスプランを作成しているのですが、この内容で本当に事業として立ち上がるのか分からず、不安なまま作業を続けている状態です。一度紺猿さんに評価いただきたいのです」

 「残念ながら、皆さんが作成された事業企画を私が評価することはできません」

 「なぜですか?今までいろいろアドバイスをいただきましたが…」

 「進め方や必要な要素などはアドバイスできますが、その事業企画の内容がターゲット顧客にとって想定した価値があり、成果が出るのかどうかについては、私は評価できません。情報を収集し検討を繰り返されている皆さんのほうが詳しいはずです」

 「ではどうすればいいのですか?」

 「最初に事業企画のプロセスを説明しました。その中の『テストマーケティング』がまさしく今の皆さんの懸念点を払しょくする手段となります。では、テストマーケティングについておさらいしましょう」

事業企画の最重要プロセスの1つ

 テストマーケティングとは、商品やサービスを顧客に提供する前に、ビジネスプランで設定したターゲット顧客の属性に当てはまる顧客数社に対して、事業企画の内容を説明し、それに関する評価をヒアリングすることをいいます。また、プロトタイプとして作成した商品やサービスを試用してもらい、結果をヒアリングします。

 テストマーケティングの結果、提供する価値(主に機能)が見込んでいる成果を生まないことが分かったり、画面が適切でないことが判明したりすれば、再検討します。

図 テストマーケティングの流れ
図 テストマーケティングの流れ
アジャイル的に開発し細かく改良する
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 投資判定の際にも「ターゲット顧客による実際の評価」が大きな判断材料となるため、テストマーケティングはできる限り実施することが必要です。

 「なるほど。実際に顧客に聞いてみるわけですね。しかし、どうやってターゲット顧客にアプローチしたらいいのか、全く分かりません」

 「神姫さん、そんなに難しく考える必要はありません。確かに技術者や神姫さんのように開発のキャリアが長い人だと、顧客へのアプローチという内容はチャレンジングだと思います。しかし、具体的な方法やなぜそうするかというロジックを理解することで抵抗なく進められます。そして何より、そのロジックの把握と実際の経験が、今後のビジネスパーソンとしての人生に役立つとお約束できます」

 「安心しました。技術者が陥りやすい失敗などあるのでしょうか」

 「御社のようなソフトハウスがテストマーケティングを実施する際、気を付けるべき点を1つお伝えします。それはプロトタイプ開発に注力しすぎないことです。テストマーケティングで使用するプロトタイプは、成果につながるメインの機能(=価値)を評価して、画面の操作性や視認性が適切かどうかを確認するためのものです。そのため、一度に多くの開発を行うのではなく、アジャイル的に少し作って顧客に使ってもらい、その評価を踏まえて改修あるいは追加開発するほうがいいです。さて、テストマーケティングでターゲット顧客にアプローチする方法としては、大きく3つあります」