事業企画書では提供する価値に加えて、対価につながる「顧客の成果」を明示する。具体的な販売計画は、絵に描いた餅ではなく、実現可能であることを印象付ける。裏付けとなる調査や検証結果などをまとめたAppendixを添えることも必須だ。
本連載は、新型コロナ後のニューノーマル時代に生き残るための新規事業立ち上げガイドラインを、限られたリソースの中で短期間に実際のプロダクトあるいはサービスを生み出すまでの取り組みを通して解説します。
前回は事業企画書で重要な事業収益試算を含む前半部分について説明しました。引き続き、ポイントとなる販売計画など核となる事業企画書の後半部分を詳しく説明します。今回も実際の新規事業の企画書としてすぐに使えるスライドを付けますので、ぜひご活用ください。
「紺猿(こんさる)さん」という事業開発を得意分野とするコンサルタントの元に、知り合いの「神姫(しんき)さん」が相談に訪れ、事業企画書の内容についてアドバイスを受けています。新規事業として提案する「介護情報管理システム」の事業企画書が、いよいよ完成しそうです。
「神姫さん、事業企画書は、投資判定会議で決裁を取るための役員に向けた『提案書』だと、もう一度念を押しておきます。では『ターゲット顧客と成果』について説明をお願いします」
「分かりました」
ターゲット顧客の成果を明確に
製品やサービスを提供するターゲット顧客を明確に提示し、その顧客でどのような課題があるのか、その課題を解決することで顧客にどんな成果が上がるのかを記載します。顧客は製品・サービスがもたらす成果に対価を支払います。そのため「成果」に対する言及は、新規事業への投資判断の重要な要素となります。
テストマーケティングの実施結果を踏まえて記載することで、単なる仮説ではなく、事実に基づく内容であることを印象付けます。また、サービス利用前と利用後に関連する業務がどのように変化したかを、比較表を使って説明します。テストマーケティングの結果は、別途Appendix(補遺)に詳細を記載します。
・ターゲット顧客
企業の業種名だけでなく、契約する部門や利用する部門などを記載する。
・課題
項目名と説明文を記載し、どのような課題があるのかを認識できるようにする。多くの場合、複数の課題があるため、重要度の高い課題から記載する。
・成果
顧客が得られる成果を列記する。重要な内容のため、テストマーケティングの結果も参照しながら詳細に記載する。複数ある場合は顧客への影響度の高い成果から記載する。
「この事業企画書では明確に成果が定義されていますし、サービス利用前後の比較表も分かりやすいです」
「うれしいです。紺猿さん、次のサービス概要は簡単すぎますか?」