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コロナ禍に慌ててオンライン面接を取り入れれば済むほど、昨今の採用戦線は甘くない。重要なのは自社の事業戦略に即した人材に狙いを定める骨太でしたたかな戦略だ。採用巧者の企業は優れたIT人材の卵に狙いを定め、自らアプローチしている。

 就職情報サイト「マイナビ」によれば、企業が十分な数の学生を採用できたかを示す2020年卒採用充足率(内定者数を募集人数で割った割合)は前年比4ポイント減の80.4%だった。2017年卒採用から右肩下がりの傾向が続いており、企業にとっては採用難が続いていることを示している。

 大手銀行などが2021年卒採用における採用数を減らす動きがあるものの、2020年3月2日に富士通が750人、4月2日にはNECが500人といずれも20年卒並みの採用を表明した。デジタル人材については多くの企業が採用を増やす。

 「売り手市場だった2019年2月と比較しても、企業からの人材紹介の申し込みが2倍に増えている」。東京大学の学生を企業に紹介するサービスを手掛けるBuildsの橋本竜一社長は、こう説明する。優秀層や高い技術を持ったエンジニア職志望の就活生の争奪戦は例年以上に激しくなりそうだ。そんな厳しい状況でも、他社より優位に採用を進めている企業は存在する。

京都に集まるメガベンチャー

 京セラやオムロン、日本電産。後に大企業へと成長したベンチャーを多く生み出した京都にこの2、3年、ベンチャー企業が続々と拠点を構えている。サイバーエージェントやLINEといったメガベンチャー、さらにSansan、リブセンスなどである。

 FinTechサービスのマネーフォワードもその1社だ。2019年2月に京都オフィスを立ち上げた。同社の村上勝俊京都開発本部本部長は「開発拠点であると同時に、エンジニア人材の採用が設立の1番の狙い」と言い切る。現在はインターンシップの大学生や大学院生を4人受け入れており、プログラミングやデータを分析する機械学習のソフトウエア開発に携わっている。インターンシップ生が就活の時期を迎えたら、積極的に入社を打診する予定だ。

 マネーフォワードが拠点を作ってまで採用に注力するのは、京都はほかの地域に比べて採用面で優位な点が多いと感じているためだ。

 1つは大学の多さ。2019年度の学校基本調査によると京都府内にある大学数は34。関東の千葉、埼玉、神奈川の3県はそれぞれ30以下だ。「京都大学はもちろん、ほかにも国公立大学や上位私立大学があり、優秀な学生が多い印象」(マネーフォワード村上氏)。

図 京都市内に支社を持つIT企業と大学の例
図 京都市内に支社を持つIT企業と大学の例
周辺に大学が多く、インターンや入社につなげやすい
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 人材を取り合う競合他社が比較的少ない点も見逃せない。東京はネットサービスを手掛けるメガベンチャーに加えて金融や製造など幅広い業種が、デジタル人材の争奪戦を繰り広げている。一方、京都は競合となるインターンシップの受け入れ先がそれほど多くないという。

 京都の大学に通う大学生が東京に本社を持つ企業のインターンシップに連日通うのは難しい。夏休みを利用するとしても期間や日数が限られる。こうした距離の壁も京都に拠点を持つ強みになっているわけだ。