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事例紹介は顧客の興味が強く、営業訪問における主目的の1つだ。顧客にどんな価値を提供できるのかをよく練って臨もう。顧客の検討時間が長くならないようメリットを整理して伝える。

 この連載ではSEから営業職に転向した人に向けて、SEの強みを生かした「ロジカルセールス」の進め方を筆者の経験とノウハウを基に説明します。

 IT企業「xTECHシステム開発」の営業担当で、卸売業向け販売管理パッケージの受注を目指しているあなたは、以下のストーリーに沿って展示会来場者への営業を進めています。

 今回は「2.訪問」の「事例紹介」を取り上げます。

  1. アポイントメント取得(アポ取り)
  2. 訪問
    環境準備
    • 訪問趣旨の説明と確認
    • 訪問内容の説明と実施内容の選択
    価値提供とニーズ把握
    • 会社説明
    • 事例紹介(商品説明を含む)
    • デモンストレーション(顧客状況の確認を含む)
    導入合意とスケジュール合意
    • 顧客要望と自社商品の適合度、導入意思、および課題の確認
    • 次のアクションの確認
  3. クロージング

 あなたはターゲット顧客を訪問し、会社説明まで終えました。相手もあなたの話に興味を持って聞いているようです。

 事例紹介は今回の訪問における主目的の1つです。顧客が最も興味を抱いている事例紹介は、話をきちんと聞いてもらえるチャンスです。単に事例を紹介するのではなく、このチャンスを有効活用するよう意識してください。

 まず、事例紹介を通じてどのような価値を提供するのか、顧客は何を理解して、判断すればいいのかを決めておく必要があります。

図「 直接価値」と「間接価値」
図「 直接価値」と「間接価値」
事例に合わせた要素を盛り込む
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 ここで「直接価値」と「間接価値」をおさらいしましょう。前者は顧客の直接的なメリットにつながる価値で、後者はそれらにつながる商品やサービスに関係する情報を指します。

 具体的には、直接価値は業務で必要とされる機能や、その機能から得られる事業面のメリット、競合と比べたときの特徴などです。間接価値は導入実績や取引先、運用体制などになります。

 事例紹介がインパクトを持つのは、「大手企業が導入している」「当社と同じ業態の企業が導入している」といった事実が顧客に大きな安心感を与えるからです。

 あなたは、自社にとって代表的な「総合機械産業」の事例を顧客に伝えたいと思っています。まず同社の紹介、そして課題を話してから、その課題はあなたが提案する販売管理パッケージによってどう解決できたのかを説明するとします。

 今回ご紹介する事例は、埼玉県を本拠地にする総合機械産業様です。1965年創業の歴史ある機械関連の卸売会社で、従業員は150人、年商は120億円です。

 手作業が多くて、事務担当者の残業が定常化していました。このため労務費が膨れ上がり、利益率が低下する要因となっていました。納品書や請求書の間違いが多く、取引先からのクレームも増えており、困っていたそうです。

 危機意識を持った総合機械産業様は、システムの入れ替えを検討し始めました。適切なシステムを探していたところ、弊社のパッケージを既に利用していた別の会社から「導入してうまくいった」と聞き、弊社をご紹介いただきました。これが製品の導入を検討するきっかけになったそうです。