プレゼンが佳境に入り、デモを実施する段階に来た。事前の合意や理由付けをして顧客の状況を確認することは必須だ。その際に相手の予算を確認しよう。失礼には当たらない。
この連載ではSEから営業職に転向した人に向けて、SEの強みを生かした「ロジカルセールス」の進め方を筆者の経験とノウハウを基に説明します。
IT企業「xTECHシステム開発」の営業担当で、卸売業向け販売管理パッケージの受注を目指しているあなたは、以下のストーリーに沿って展示会来場者への営業を進めています。
- アポイントメント取得(アポ取り)
- 訪問
環境準備- 訪問趣旨の説明と確認
- 訪問内容の説明と実施内容の選択
- 会社説明
- 事例紹介(商品説明を含む)
- デモンストレーション(顧客状況の確認を含む)
- 顧客要望と自社商品の適合度、導入意思、および課題の確認
- 次のアクションの確認
- クロージング
デモの中で顧客の状況を確認
訪問先でのプレゼンはいよいよ佳境です。今回は「2.訪問」の「デモンストレーション」を取り上げます。
デモを実演するだけでなく、顧客の既存システムの状況やスケジュール感、予算を確保しているかなどを確認することが大きなポイントとなります。特に「予算の確認」は欠かせません。どのように進めればいいのか、さっそく仮想体験してみましょう。
では、実際に動く画面をデモでご覧いただきます。その前に、貴社のご検討内容を簡単にお伺いできないでしょうか。貴社のご要望や重要視されている点を意識しながら、デモを進めさせていただければと思いますので。
(なるほど、確かにそうですね)
簡単で構いませんので、貴社での販売管理システムのご検討状況を教えてください。できましたら、ご検討のきっかけといいますか、背景からお聞かせいただけると助かります。
(分かりました)
ここでは、デモ中に顧客状況を確認するというストーリーにしています。
最適なデモを実施するためにも、顧客の状況を確認することは必須です。しかし、ここまでのやり取りの中で、この点について合意を得ていません。この状態でいきなり顧客の状況を確認すると、相手に不信感を与えてしまう恐れがあります。
顧客に対して説明や確認といった折衝を行う際には、事前の合意や理由付けが必要になります。そこで「最適なデモを実施するために、検討状況を教えてほしい」と理由付けをして合意を得た上で、デモの前に顧客の状況を確認します。
すると顧客は以下のような背景を話してくれました。
(当社は昔はオフコンでシステムを動かしていましたが、7年前にPCサーバーに入れ替え、手組みでシステムを作ってもらいました。
システムを導入した当時は問題はなかったのですが、新規の取引先が増えて取扱商品が変わったときなど、その都度業者に依頼して修正してもらう必要が生じました。それではお金がかかりすぎるので、営業事務担当者がだんだん手作業で対応するようになりました。現在ではほとんど手作業になり、担当者の残業が定常化しています。
先ほど事例で伺った会社と同じく、特に締めの前後は残業続きとなります。労務費の問題に加え、営業事務担当が辞めてしまうのが問題になっています。現在の担当者は入社2カ月で、慣れない分残業が多く、それでも回らないので営業担当が自ら事務作業をしているありさまです。
あまりにミスが多く、お恥ずかしい話ですが、取引先から呼びつけられたことが何度もあります。こうしたことから「システムの入れ替えを至急検討するように」と社長が指示しました。
現在はインターネットで検索して様々なパッケージの資料を取り寄せて、検討しているところです。実際に動く画面も見たいと思って先日展示会に行き、xTECHシステム開発さんのブースに立ち寄ったわけです)
状況を丁寧に教えてくださり、ありがとうございます。具体的にいつ導入したいといったご希望はありますか?
(どんな機能が必要かや、具体的な要望はなどと言われても正直、分かりません。あまりコンピューターに詳しい人間はいないので、簡単に使えて、手作業がなくなり、残業が減ってミスがなくなればいいだけです。できるだけ早めに導入したいと考えています)