顧客への初回訪問で必要になるのが会社説明だ。たかが会社説明と侮ってはいけない。場合によっては商品の優位性などの「直接価値」を訴えるよりも、企業規模や事業内容といった「間接価値」の印象が受注確度に影響する。
この連載ではSEから営業職に転向した人に向けて、SEの強みを生かした「ロジカルセールス」の進め方を筆者の経験とノウハウを基に説明しています。
これまでの連載で、初回の顧客訪問が大切だと解説しました。初回の顧客訪問は以下のストーリーで商談を進めるとよいと伝えました。
その1:環境を準備する
1-1:挨拶と名刺交換
1-2:訪問趣旨の説明と確認
1-3:訪問内容の説明と実施内容の選択
その2:価値を提供し、相手のニーズを把握する
2-1:会社説明
2-2:顧客状況の確認
2-3:商品説明
その3:導入意思とスケジュールを確認・合意する
3-1:顧客要望と自社商品の適合度、導入意思、および課題の確認
3-2:次のアクションの確認
「その1:環境を準備する」まで解説しましたので、今回は「その2:価値を提供し、相手のニーズを把握する」の最初の項目である「2-1:会社説明」と「2-3:商品説明」を取り上げます。
「会社説明にそれほど大きな意味があるのだろうか。説明の仕方に差があるように思えない」と考える読者もいるかもしれません。実は、会社説明は顧客に提供すべき重要な「価値」につながります。まず顧客に提供する「価値」について説明します。
「直接」「間接」の2種類の価値
見込み顧客に対して適切な価値を与えられるかどうかは、営業の成果を大きく左右します。適切な価値を提供できれば、受注確度が向上し、販売単価を上げられます(値引きの抑制も含む)。
顧客に提供する価値は2種類に分けられます。1つは顧客の直接的なメリットにつながる「直接価値」です。業務で必要な機能、それらの機能から得られる事業面のメリット、競合商品と比べた際の特徴などです。
もう1つは「間接価値」です。顧客のメリットにつながる可能性のある、商品やサービスに関係する情報を指します。導入実績や取引先、運用体制などがその例です。
受注を左右するのは間接価値
会社説明に話を戻しましょう。顧客にとって、営業担当者が勤める会社の情報は間接価値です。つまり、会社説明は間接価値を相手に提供する行為と言えます。
「大切なのは商品なので会社説明は冒頭にさらっと流せば十分」と考えている人も少なくありません。しかし、そうした姿勢では受注確度が上がらず、今後の値引き防止にもつながらないでしょう。
なぜでしょうか。見込み顧客が発注を検討する際、間接価値は直接価値と同等か、場合によっては直接価値よりも大きな影響を与えるからです。
「競合他社と比べて明らかに商品の直接価値が勝っている」「競合がひしめく市場の中で、この直接価値を提供できるのはあの商品だけ」──。こんなケースはめったにありません。しかも企業向けIT商材はほとんどの場合、導入してみないと言い値通りの直接価値があるかどうかが分からないケースが多いのです。顧客もその点は分かっています。