5. 陰影
悪い点を説明することで良い点を強調するテクニックです。例えば以下のように説明します。「弊社製品はこの点については他社より劣っています。しかしこの点では、他社のどの製品と比べても引けを取りません。この機能(特徴)が重要であれば、ぜひ弊社製品をお選びください」。
リスクがある言い方だと思われるかもしれません。しかし、どの商品にも一長一短があるのは当然で、顧客もそれを分かっています。悪い点を顧客に説明すると信頼の獲得につながります。
商品の特徴を一様に説明しているようでは、相手の印象に残らず、受注確度は向上しません。ターゲット顧客に対して価値の高い特徴に絞って説明する姿勢が大切です。それにより、受注確度の向上につながる印象づけが可能になるのです。
6. 緊張
「これから説明する内容が本商品の機能では最も重要です。しっかりお聞きください!」などと前ふりし、場の緊張感を高めるテクニックです。高い価値を提供する製品であるとを印象づけます。効果はありますが、多様は禁物。1回の訪問で基本的に1度しか使えないと考えてください。
7. 弛緩
発注の確度や競合他社の検討状況などはなかなか聞きにくいものです。顧客に確認しにくかったり、確認しても回答をもらいにくい質問をする場合に有効なのが「弛緩(しかん)」です。場の空気を和らげるテクニックです。やり方は簡単で、要するに「笑い」を取りにいくのです。
ふざけているわけではありません。このテクニックは有用かつ重要です。最初から最後まで淡々と説明していると、場の雰囲気が停滞し、顧客の思考も止まってしまいます。すると商品の価値の印象づけも難しくなります。笑いによって場の雰囲気を和やかにすれば、顧客に確認しにくいことも聞きやすくなります。
「冗談を言うのは苦手なんだけど……」と考える読者もいるでしょう。心配は無用です。どんな冗談でも構いませんし、冗談が受けなくてもOKです。冗談を言った後に「スベっちゃいました……」と言えば、多くの場合、笑ってもらえます。
最初のうちは難しいかもしれません。営業折衝に慣れてきたタイミングで、話しやすい顧客に試してみましょう。次からは必須のテクニックだと感じるはずです。
顧客が多様な場合の対策
以上で商品説明に関する解説は一通り終わりです。最後に、顧客の絞り込みについて補足します。
先ほど、商品をアピールする際に、顧客に対して価値の高い特徴に絞って説明すると解説しました。すると、よくこんな質問を受けます。
「私の担当エリアの中には様々な顧客がいて、ニーズがそれぞれ異なります。この場合、顧客にアピールする価値をどう絞り込めばいいのでしょうか?」。
アピールする商品価値を絞り込むには、ターゲット顧客の特性を見極めなければなりません。しかし、質問のようにターゲット顧客の特性が異なる場合はどうすればよいのでしょう。筆者の体験談をお話しします。
筆者がSEから営業に転向して試行錯誤していたころ、受注を取れる営業担当者と取れない営業担当者で何が違うのかを調べました。すると多くの違いが分かりました。その1つが「顧客を絞っている」やり方でした。なぜ顧客を絞ることが大切なのか。筆者が後に新規事業を企画し、立ち上げる過程で、その理由を理解できました。
事業を立ち上げる際、営業面では「誰に」「何を」「どのように」販売するかを決めていきます。事業の立ち上げや継続が可能かどうかは、ターゲット顧客に商品が価値を提供できるかどうかにかかっています。商品が価値を提供していない、あるいは顧客がその価値を望んでいないようだと、商品が売れず、事業は成り立ちません。