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 「従来型のシステムインテグレーション(SI)ビジネスが継続して拡大するとは考えづらい。我々自身の付加価値を高め、発展していかなければならない」。大手システムインテグレーター(SIer)、TISの河村正和執行役員企画本部経営管理部長は危機感をあらわにする。同じく大手SIerである日本ユニシスの葛谷幸司取締役専務執行役員も次のように話す。「従来型ビジネスはいずれ消滅するかもしれない。強い危機感を持って2016年ごろから変革に取り組んでいる」――。

 なぜ今、大手SIerはこうした危機感を持っているのか。その背景の1つに、システム構築に対するユーザー企業側の変化がある。多くのユーザー企業がオンプレミスからクラウドへの移行を進める中、従来のように業務システムを個別に構築するケースは減っている。ビジネスのグローバル化などが進む中、システムに合わせて業務プロセスを変えるなどして、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型のERP(統合基幹業務システム)などを導入する企業が増えているからだ。

 個別システムにおいても、ユーザー企業がこれまでのようにSIer任せにはしない動きが出てきている。自前でシステムを開発する内製化などの動きだ。デジタル技術で事業モデルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる中、いち早く環境の変化に対応するため、ユーザー企業自らがシステムを内製開発できる体制を整え始めているのだ。「餅は餅屋」の部分が残るので受託開発ビジネスが完全になくなることはないにせよ、コスト圧力が強まっていくとみられる。

ITサービス市場は堅調に推移

 そうした危機意識とは裏腹に、事業の足元の数字は悪くない。情報サービス産業協会(JISA)が経済産業省の産業動態統計を基にまとめた「情報サービス業 売上高、従業者数の伸び率の年間推移(2006-2020)」によると、近年の情報サービス産業は従業員こそ漸減しているものの、売上高は増加基調にある。2020年は新型コロナウイルスの影響でIT投資を控える企業が相次いだため大きく減速したが、それでも売上高はプラス成長となった。

図 情報サービス産業の売上高・従業者数の推移
図 情報サービス産業の売上高・従業者数の推移
ITサービス全体の売り上げは伸びている(出所:情報サービス産業協会(JISA)の資料を基に日経コンピュータ作成)
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 一方、調査会社のIDC Japanの調べでは、2020年度のITサービス市場は前年比2.8%減の5兆6834億円となった。JISAの調査とは市場の内訳や集計方法が異なるので一概にはいえないが、新型コロナの影響を受けて商談の停滞や新規プロジェクトの先送り、進行中のプロジェクトの中断、進捗の遅れなどがあったのは事実といえる。

 ただしIDC Japanの調査においても、先行きの見通しは堅調だ。2020年後半からITサービス会社の受注状況は回復傾向にあり、延期されていたプロジェクトも再開しつつあるため2021年はプラス成長に転じるという。2022年以降も成長率は次第に鈍化するものの、2025年までの年間平均成長率は2.4%と緩やかな成長が続く見通しだ。同社の木村聡宏ITサービスリサーチマネージャーは「既存システムの刷新や更新需要、企業のDX投資が市場の成長を支える」と説明する。

 このように中期的にも市場の安定成長が見込まれているにもかかわらず、なぜ「変革待ったなし」なのか。ここに前述のユーザー企業の変化が大きく関係する。情報処理推進機構(IPA)の2019年度のIT人材動向調査を見るとSIerが変革を迫られている現状が見えてくる。ユーザー企業の中でIT人材が「大幅に不足している」と回答した割合は前年度から1.9ポイント増えて33.0%に達した。大手企業を中心にシステム開発を内製する動きが活発になっており、IT人材が引く手あまたの状況になっているのだ。

 IPAの調査によると「社内にITのスキルを蓄積・強化するための内製化」をしているユーザー企業の割合は、前年度から5ポイント上昇して52.9%と半数を超えた。特に大手企業やDXに取り組む企業などが、システムの企画・設計など上流工程の内製化を積極的に進めている。