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大組織の意思決定が遅い理由は中間管理者などが組織処世術に走る点にある。企画書作成に数カ月を費やし、報連相は形骸化し、志ある者は辞めていく。新型コロナ禍で不確実性が高まる今こそ、「心のマネジメント」に転換するときだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ政府の要請を受け、在宅勤務がいや応なしに進んでいます。働き方改革の目玉として数年前から在宅勤務が奨励されてきましたが、浸透には至りませんでした。皮肉にも新型コロナという恐怖・不安・リスクが改革を進ませる結果となりました。今回はまず組織改革における筆者の考えを記載します。

 企業組織を改革するには、「現状のリスクや緊急性の共有」が重要である点については、読者の皆様もご存じだと思います。実はこの「現状のリスクや緊急性」という言葉は事業部門によって、その詳細や重みが違ってきます。大組織になればなるほど、階層化やサイロ化が進んでいるからです。

 現状のリスクや緊急性を知るには社外に目を向ける必要があります。自社を取り巻く経済環境や競合の状況などは全社員が把握してこそ、自社に永続性が生まれるものです。

 ですが社外にどれだけ関心を示し、そこから課題をくみ取るかといった度合いは組織階層で見ると、ひょうたんのように示せます。最下層の現場は常に社外との接点が多く、市場動向や競合他社、自社の顧客などから多くの刺激があるものです。常に感覚が研ぎ澄まされ、課題認識や危機感が生まれ、新しいアイデアも出てきます。

図 組織階層における社外への関心度の違いを示すひょうたんモデル
図 組織階層における社外への関心度の違いを示すひょうたんモデル
中間管理者層は組織処世術に終始しがち
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 組織階層の最上位層である経営層は会社のかじ取りという大きな責務を負っているので、株主や他社の製品・サービス、業界動向、景気といった会社を取り巻く外部環境に敏感です。

 現場や経営層に比べて、中間管理者から成る中間層は一般に社外への関心が低くなります。主な業務が経営方針を現場に下ろして現場を監督管理するためか、現場感覚は若いときに培ったものからアップデートされておらず、組織処世術、端的に言えば派閥争いにばかり敏感になってしまいます。

 するとどうなるか。中間層は各人がばらばらに行動するようになり、自律した現場があったとしても経営層の指示がそこに伝わりません。組織改革を進めようにも、ばらばらの中間層が抵抗勢力となり、「総論賛成・各論反対」の姿勢を取ってしまうのです。