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SOMPOシステムイノベーションズの現場改善に向けた「塾」の第2期を解説する。アナログの可視化につまずいた過去からある塾生がデジタルでの可視化に傾注した。同じ可視化でもアナログとデジタルでは何が違い、改革にどう影響するのか。

 SOMPOシステムイノベーションズ(SSI)は組織改革に向けた現場リーダー育成塾の第2期について、第1期が終わった4カ月後の2019年9月17日から12月23日まで全12回で実施しました。基本的には毎週の開催でした。

 複数期に渡って塾を開く際は、今の期と次の期を半期ほどオーパーラップさせたり連続させたりすると、組織変革・働き方改革が定着しやすくなります。SSIは4カ月空きましたが、その間1期生が社内ワークスタイル変革のアピールイベントを開いていたので、第1期終了後も組織への良い影響を維持できていました。

 第1期の塾生は主にSSIの内山修一社長からの直接の声がけにより募りましたが、第2期の塾生は各部署のリーダーにノミネートしてもらう形で募りました。内山社長は各部署でのコミュニケーションが活性化することを期待していたようです。

デジタル傾向が強い第2期

 1期生と比べると、2期生はデジタルツールで可視化する傾向があり、模造紙や付箋を使った「アナログ」な可視化への疑問や抵抗が強かったと感じています。世の中には今、様々なデジタルツールがあります。テレワークの仕事支援から、コミュニケーション支援、プロジェクト管理支援、アジャイル開発ツールなどです。

 いずれも手軽に手に入り、その中から自分たちが最適と評価するツールを選んで使うスタイルが一般化しています。しかし、デジタルツールを使えばチームビルディングがはかどるというわけではありません。

 逆にデジタルツールに頼り過ぎて失敗するケースが多くあります。その理由はデジタルツールを使うだけでは解決できない課題や問題が現場にはあるからです。それに気付かず「デジタルツールに問題がある」としてしまうと、現場の改善活動が進まず、活動そのものが形骸化してしまいます。

 この点、内山社長は第1期を観察してアナログから始める大切さを学び、次のように話していました。「アナログの活用には2つの良さがあると理解しています。1つはチームメンバーの関心を引きやすく、巻き込みやすくなる点です。メンバー全員の意識が高くそろっているチームは少なく、そのうえメンバーの意識は刻々と変わります。実際のところは、どのようなチームにも必要となるかと思います」。

 内山社長は続けます。「もう1つの良さはこれまでのやり方を壊して再構築する際に、アナログだと取り組みやすい点です。『垢を落として壊す』思考を促しやすくなるのです」。

 筆者もこの2点に同意します。さらにアナログは「創意工夫」を習慣づける点で役立つと考えています。既成のデジタルツールには限界があり、自分たちの現場の様々な様子を思うように可視化できません。時として失敗するだけでなく、ツールに縛られて創意工夫の思いもなくしかねません。

 そうではなく、現場の課題や問題をあぶり出し、より良い環境に改善するため、どうアナログなボードを設計・運用するのかと知恵を絞ることは、創意工夫のトレーニングにつながります。普段は使っていない脳の力を呼び出し、鍛えるのです。

 アナログで永遠にやれと言っているわけではありません。アナログで試して、短いサイクルで改善し、自動化(自働化)できる部分はデジタルツールを探して組み合わせ、ツールがない場合は自らつくるというプロセスそのものが改善作業には欠かせないのです。安易にデジタルツールに解を求めると、創意工夫の芽を摘むだけではなく、自分たちの「考える」「行動する」能力を退化させてしまいます。創意工夫は生き生きと仕事をする、現場が明るくなるという効果にも結び付きます。

 アナログだけでも、デジタルだけでもうまくいきません。現場の成長に合わせて、アナログとデジタルをバランス良く使っていくことが大切なのです。塾で強制的にアナログを体験させるのは、塾生がこの考え方を身をもって学んでほしいからなのです。会得できるか否かは、改善活動の本丸ともいえる、卒塾後の継続活動へのモチベーションを左右します。