IIJはIoTによって農家が水田を見回る日々の作業を3割以上減らしている。アグリテックのベンチャーPLSはIoTでトマトの収穫量を5割増やした。病害虫を探索しピンポイントで農薬を散布するドローンも登場した。
作物の栽培では人工衛星やIoT、AI、ドローンなどの技術が効果を発揮する。人工衛星を使って地上画像から作物の栽培に適した土地を見つけたり、大規模農場での作物の生育状況を把握したりする。IoTとAIによって水田やトマト農場の状況を把握し、日々の見回り作業を代替したり収穫量を増やしたりする取り組みが進んでいる。害虫や病気がはびこる場所をドローンによって見つけ、ピンポイントで農薬を散布する技術も実用化された。
人工衛星で土地解析 適地探索、収穫量予測
天地人、カゴメ・NEC
宇宙ベンチャーの天地人は、人工衛星で収集した気象解析データを基に栽培に適した土地を見つけるサービス「天地人コンパス」を2019年から展開している。
天地人の主な顧客は農産物を扱う商社や農業コンサルティング会社などだ。それら顧客の契約農家が耕作する。
天地人は顧客が提示した条件に合った栽培適地を広域に探す。これまでにニュージーランドのキウイ生産企業ゼスプリグループの日本法人やコメ卸最大手の神明ホールディングスなどから耕作適地を探す依頼を受けたという。
そのほか、既に作物を栽培している農業生産法人などに対し、過去の気候と収穫量のデータを基に今シーズンの収穫量を予測するサービスも提供する。
カゴメとNECが5年間かけて共同開発した、AIによる営農支援システムも人工衛星で取得したデータを活用する。人工衛星から5日に1回農場を解析し、葉の広がりなどから農場内におけるトマトの育成のばらつきを判定する。解像度は10メートル四方という。
農場の気象・土壌センサーの測定値と合わせて、農家向けWebサイトで農場の状態を表示し、AIが水やりの量や肥料・農薬が必要な箇所を助言する。2社が2019年にポルトガルの農場で実施した実証実験では、現地の一般的なトマト農場に比べ、施肥量を約20%削減しつつ収穫量は1.3倍となったという。カゴメは同システムを使う営農支援サービスを2020年4月に事業化し、欧州のトマト加工品メーカーに対して提供を始めた。