長期化した新型コロナ禍は企業の新卒採用の在り方を変えた。対面からオンラインへの移行、生き残りをかけたデジタル人材の激しい獲得競争だ。例年以上に企業ごとの新卒採用の巧拙が勝敗を分けるシーズンになる。
「インターンから面談まで、すべてがオンライン前提に変わってしまった」――。2022年春に卒業する大学生の就職活動(22年卒採用)について、法政大学キャリアセンターの内田貴之課長はこう指摘する。
企業の採用担当者や学生にとって、インターンシップや説明会、採用選考といったすべての過程でオンラインが当然になった。採用コンサルタントの谷出正直氏は「2021年卒の採用では、急きょオンライン説明会や面接を導入した企業もあり、不慣れな企業が多かった。だが、今年はオンライン対応の準備期間があった」と説明する。もともとは互いに感染を避けつつ学生に会うため次善の策として導入したオンライン採用だったが、これを逆手に取り、さらなる人材募集につなげようとする動きが22年卒採用では顕著だ。
例えば説明会の様子をアーカイブにして24時間いつでも見られるようにする例だ。「時間が他の予定と重複している」「残席がなく出席できない」といったことがなくなる。応募数増を期待して日立製作所のように今シーズンから「オンデマンド面接」を導入する企業も出てきた。オンデマンド面接とは企業があらかじめ設定した質問に対し、学生がスマートフォンなどで撮影した動画で回答する面接方法だ。
学生側にも戸惑いは見られない。法政大学では例年3月に大学内で開催していた企業説明会を、2021年3月はすべてオンラインに変えた。「学生は大学の授業をオンラインで受けることも多く、オンラインの企業インターン経験を持つ学生も多数おり、かなり慣れている」(内田課長)。