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デジタル人材はAIサービス開発やデータ分析を通じ、業務を変革する力を秘めている。どの企業も採用したい人材だけに、見つけたり仲間にしたりするのは容易ではない。採用巧者はどのようにしてデジタル人材の「原石」にアプローチしているのだろうか。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)やテレワーク環境整備、5G(第5世代移動通信システム)に関連する開発案件が多いことなどで、ITエンジニアの採用難が続いている。パーソルキャリアによると、ITや通信など技術系の2021年3月の求人倍率は8.02で、全体平均の1.86を大きく上回る水準で推移している。これは中途採用の数字だが、新卒採用においてもITエンジニア候補の有望な人材を見つけて採用することは容易ではない。

 特に採用難といわれるのがデジタル技術を生かした新たなビジネスモデルを考え、実装まで担える「デジタル人材」だ。IT企業に限らず、あらゆる業種でデジタル人材争奪戦が繰り広げられる中、果敢にその競争に飛び込んだのがスーパーゼネコン(総合建設会社)の一角を占める鹿島だ。

コードで土木が書き換わる?

 鹿島の中で、特にデジタル人材を渇望するのが土木工事の分野。ブルドーザーなどの建設機械を無人化して自律運転させ、人員をかけずに現場作業を遂行する「A4CSEL(クワッドアクセル)」というシステムの開発を進めているからだ。

 建設機械を自動運転するアルゴリズムの開発や、現場作業のデータを基に作業効率の把握やボトルネックの発見、改善策の提示といった仕組み作りにデジタル人材が生み出すコードが欠かせない。そのため「土木工事の現場における人手不足や職人の高齢化などを考えると、デジタル人材をどう確保するかは、鹿島が生き残っていくための喫緊の課題」(鹿島機械部の三浦悟自動化施工推進室長)になっている。

 重要性は高いものの、鹿島のデジタル人材採用は壁があった。そもそも鹿島にデジタル人材が活躍できる業務があると認知されていないことだった。しかし、このまま手をこまぬいているわけにはいかない。鹿島が打ち出したのは自らが「デジタル人材の視界に入ること」だった。

 その象徴が2020年1月に新設したWebサイトだ。「土木をコードで書きかえろ。」というメッセージとともに、クアッドアクセルの説明や、本格的にクアッドアクセルを稼働させている秋田県に建設中の成瀬ダムでの適用例が見られるようになっている。三浦室長は、「ダムだけではなく、宇宙での利用も想定して、宇宙開発のコンテンツも掲載している」と語る。これは実際にJAXA(宇宙航空研究開発機構)と月面有人探査をする際の拠点建設に使えないか共同研究しているものだ。

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デジタル人材の採用に力を入れる鹿島のWebサイト(上)とデジタルを活用した作業現場の様子(下)(写真提供:鹿島)
デジタル人材の採用に力を入れる鹿島のWebサイト(上)とデジタルを活用した作業現場の様子(下)(写真提供:鹿島)
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 デジタル人材に魅力を感じてもらうコンテンツ作りと並行して、サイトに呼び込む取り組みも始めた。2020年12月には、競技プログラミング大会の運用などを手掛けるAtCoderと共同で「鹿島建設プログラミングコンテスト2020」を開催。コンテストのサイトで鹿島になぜデジタル人材が必要なのかといった情報や「土木をコードで書きかえろ。」のリンクを掲載した。

 2021年2月にはデジタル人材に向けたターゲティング広告を打つなどし、サイト上の採用エントリーには新卒と中途採用で約4000の応募があった。4月には再びAtCoderのプログラミングコンテストを協賛するなど、継続して認知度を上げる取り組みをしている。