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大手IT企業やユーザー企業のIT部門に、「日本型雇用」を見直す動きが広がっている。デジタル化に加え、ベンダー丸投げとされるIT部門の体質改善の可能性も秘める。ジョブ型雇用の導入が進むIT人材は、変わる雇用のフロントランナーになり得る。

 「ジョブ型雇用」を導入する日本企業が増えている。欧米のように仕事内容や労働時間、勤務場所などを限定した正社員の雇用形態だ。特定された労働の種類を職務(ジョブ)と呼び、欧米では職務を基に雇用契約を結ぶ。

 従来の日本型雇用はメンバーシップ型雇用と呼ばれる。企業の中にある様々な労働を職務ごとに切り出さずに雇用契約を結ぶのが特徴だ。労働者がどの職務に従事するかは、使用者である企業の命令でその都度決まる。日本型経営の特徴とされる「終身雇用」「年功序列型賃金」「企業別労働組合」「新卒一括採用」などはメンバーシップ型雇用の論理的な帰結とされる。

図 日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)の特徴と課題
図 日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)の特徴と課題
デジタル人材など高度人材の獲得が困難に(出所:日本経済団体連合会「2021年版経営労働政策特別委員会報告」を基に日経コンピュータ作成、写真:Getty Images)
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 ジョブ型雇用を導入する動きの中心にいるのがIT人材だ。三菱UFJ銀行は2022年春に入行する新卒社員を対象に専門性の高い人材を採用するために「システム・デジタル」など4分野でジョブ型雇用を取り入れる予定だ。KADOKAWAのIT部門子会社のKADOKAWA Connectedはロール(役割)に基づいて権限・責任・報酬を規定する仕組みを導入し、ジョブ型雇用に近い雇用体系を設けた。

 日立製作所や富士通、NECといったIT大手もジョブ型雇用にかじを切った。富士通は2020年4月、国内のグループ会社を含む管理職以上の幹部社員を対象にジョブ型雇用を導入した。

 IT人材はジョブ型雇用との親和性が高い。職務を遂行するために高度な専門性が必要で、かつ、それらの専門知識やスキルは社外でも通用するからだ。職務に対して外部労働市場の“市場価格”を対応させやすい。

 まして優秀なIT人材は引く手あまただ。外資系企業などと伍(ご)して人材を獲得するには、年功的な賃金テーブルに縛られずに、たとえ若くても高い報酬を提示する必要がある。