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機械学習(ML)モデルは本番稼働させた後、精度が下がっていくケースがある。日本郵船はモデルを継続的に改良する「MLOps」の仕組みを整えた。人工知能(AI)をビジネスに活用するうえで、MLOpsは必須だ。

 現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)で用いる中核技術の1つになっているのが機械学習(ML)モデルだ。日本郵船は研究開発子会社のMTIと共同で、航行中の船舶の異常を各種センサーの情報から検知するMLモデルを開発。2020年8月から約200隻のコンテナ船などで本格稼働させている。実際に起きた機関異常の70%以上について、早いタイミングでアラートを出せるという。

図 日本郵船が子会社のMTIと開発したMLモデルの概要
図 日本郵船が子会社のMTIと開発したMLモデルの概要
船舶の異常を自動検知。写真は日本郵船の自動車運搬船(写真提供:MTI)
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 日本郵船の山田省吾海務グループグループ長代理機関長は「24時間にわたる監視ができない人間に代わりMLモデルで異常を検知するようにしたことにより、地上センターを経由した対象船舶への通知は年間約300件に上り、安全運航に役立っている」と話す。

 日本郵船におけるMLモデル活用の特徴は、モデルの本番運用を始めた後も継続的に改良している点だ。実はMLモデルを本番導入した際、異常の検知率はもっと低かった。MTIで船舶物流技術グループ機関ソリューションチームユニット長を務めるプトゥ・ハンガ・ナン・プラヨガ氏は「運用を開始した時点では、実際に起きた機関異常のうち、MLモデルが早期にアラートを出せたのは約50%だった」と語る。MLモデルには24時間働く良さがある。5割の精度でも業務に役立つと判断したため、本番導入に踏み切った。

 実際の業務では、MLモデルが異常を見逃しても地上センターの機関士が見つけることで、致命的な問題にはならないようにしている。MLモデルは船に取り付けた各種計器から得られる排ガスの温度や燃料圧力などのデータに関する変動の仕方(振る舞い)を監視し、その異常を「異常スコア」として算出する。あらかじめ設定したしきい値を超えたら地上センターのベテラン機関士に通知する。機関士にとっては異常の半分でも自動検知できれば、それだけ業務負担が軽減される。

 MLモデルを本番導入した後、機関士の協力によって精度を高めている。モデルの推論結果を機関士がチェックして、間違っていれば正しい結果を学習データとし、再トレーニングする。これにより継続的にモデルを改良し、約7割の精度まで高めた。

図 日本郵船とMTIのMLOpsの取り組み
図 日本郵船とMTIのMLOpsの取り組み
本番導入後もモデルを改良
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