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AIを使うためにはメリットとデメリットの両面の理解が必要だ。人間ができない分析が可能になる半面、倫理や法規制など新たなリスクをもたらす。AIを利用するための原則を作成し、責任を持って活用できる体制を整えよう。

 本連載はAI(人工知能)時代に求められるIT監査のあり方について、内部監査人の立場から解説する。

 「AI時代」と題しているが、AIの影響のみを対象にしているわけではない。アジャイル開発やクラウドコンピューティング、ビッグデータといった、AIとともに急速に普及してきたIT関連の事象を、内部監査時にどのように扱うべきかを広く取り上げていく。

 監査人の視点を知ることは、監査を受ける側となる情報システム部門やユーザー部門に所属する情報システムの管理者などにも役立つ。監査人の視点は、日ごろの情報システムの開発や運用において重視すべき視点となるからだ。

 これまで本連載ではクラウドやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など様々なテーマを取り上げてきた。今回と次回はAIそのものの監査について解説する。

 前回取り上げたビッグデータは、AIと組み合わせることで従来の活用方法とは格段の差がある情報を得られる可能性があると説明した。このようにAIは活用するメリットが大きい半面リスクも大きく、特性を理解する必要がある。今回はAIに対する監査を理解するために、最初に知っておきたいAIの特徴やAIを活用するための基本原則を解説する。

自己学習で自らに勝つAI

 まずはAIの特徴をみていこう。AIのメリットはビッグデータなどの膨大なデータを深くかつ高速に分析できることだ。分析を反復することでより効果的な分析方法を自ら学ぶ「自己学習機能」をAIは持つ。分析によって目的達成に有効な「インテリジェンス情報」を引き出せる。より活用を進めることで、分析による情報の提供だけでなく分析結果に基づいた評価や意思決定、課題解決策の提案などもAIだけで可能になる。

図 AIの長所
図 AIの長所
AIが人間をはるかにしのぐ分野もある
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 英ディープマインドの囲碁AI「AlphaGo」は世界のトップクラスの棋士を破って有名になった。だが新たな囲碁AI「AlphaGo Zero」が登場し、AlphaGoを100勝0敗以上の大差で破った。AlphaGoとAlphaGo Zeroの違いは学習方法にある。AlphaGoが人間のプロ棋士の棋譜と自己対局を基に深層学習(ディープラーニング)したのに対し、AlphaGo Zeroは自己対局のみで学習している。

 この事実はAIの自己学習能力の高さを示している。対局のような勝利の法則を見いだすために試行錯誤が可能な場合、AIは能力を発揮する。AIが得意な囲碁対局でAIが好手として示した手が、「なぜ好手なのか」をプロの棋士が見てもすぐには分からないこともあるという。

 これはAIの視界の広さや分析の深度が人間の能力をはるかにしのいでいることに起因すると考えられる。そしてAIは人間の能力を超えるだけでなく、人間と異なり疲労することなく継続的にインテリジェンス情報を提供できるメリットもある。

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