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企業におけるソーシャルメディアの活用が進んでいる。ソーシャルメディアは情報収集など新たな効果をもたらす一方で、特有のリスクを持つ。活用する際には効果のみに注目するのではなく、リスクを把握することが重要だ。

 本連載は、AI(人工知能)時代に求められるIT監査のあり方について、内部監査人の立場から解説する。

 「AI時代」と題しているが、AIの影響のみを対象にしているわけではない。アジャイル開発やクラウドコンピューティング、ビッグデータといった、AIとともに急速に普及してきたIT関連の事象を、内部監査時にどのように扱うべきかを広く取り上げていく。

 監査人の視点を知ることは、監査を受ける側となる情報システム部門やユーザー部門に所属する情報システムの管理者などにも役立つ。監査人の視点は、日ごろの情報システムの開発や運用において重視すべき視点となるからだ。

 今回と次回でソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を中心としたソーシャルメディアの管理と監査について解説する。

 昨今の急速なITの発達や高度化、それらに伴う利便性の向上は「さらなるITの専門化」と「ITの日常生活への浸透」という2つの潮流を生み出している。そして今、3番目の潮流として話題になっているのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」だ。

 1つめの潮流であるITの専門化によって「ITの所有と利用の分離」というビジネスモデルが生まれた。クラウドコンピューティングやASP(アプリケーションサービスプロバイダー)のようなビジネスモデルだ。

 2つめの潮流からは「ITの日常化」という現象が生まれている。IoT(インターネット・オブ・シングズ)のようにモノがインターネットを介してつながり、情報交換によって相互に制御し合ったり、連携したりする仕組みが普及した。IT機器と非IT機器のボーダーレス化が進み、一般的な業務プロセスにITがビルトインするなど、ITが普遍化している。

 最後の潮流であるDXは流行語とも言えるほど注目が高まっている。ビッグデータとAIの活用によって従来の企業システムとは格段の差がある効果的かつ効率的な変革が、日常生活や組織の様々な場面で行われるようになっている。

 これまでよりも膨大な量の情報を収集でき、それを利用した分析、そして適切な評価や意思決定が様々な場面で起こっている。これらの流れを受けて今、普及しているのがソーシャルメディアだ。

企業利用は10ポイント増加

 企業におけるソーシャルメディアの活用は今、急速に進んでいる。

 その背景の1つにスマートフォンの普及によるソーシャルメディアの利用人口の急増がある。総務省が2019年5月に公表した「平成30年通信利用動向調査」によると、インターネット利用者の約60%がSNSを利用しているとの結果だった。特に20~29歳では78.5%、30~39歳では74.8%と高い利用率になっている。

 SNSの利用者が増えるとともに、企業におけるSNSも含めたソーシャルメディアの利用率も右肩上がりだ。同調査によると企業でも全体の36.7%がソーシャルメディアを利用しており、前年の調査の28.9%から10ポイント弱、利用率が伸びている。