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 携帯大手3社の2020年4~12月期決算は好調だった。NTTドコモは減収だったが、各社とも前年同期比数%の増益で、営業利益の通期見通しに対する進捗率は85~93%に達する。ソフトバンクは通期業績予想を上方修正した。年間最大の営業費用を投じる春商戦を残すものの、今期(2021年3月期)の好業績はほぼ確実といえそうだ。スマホ決済サービスなどでポイント還元の大盤振る舞いが期待できるかもしれない。

 もっとも来期(2022年3月期)は新料金プランの投入などで減収は必至。決算発表会では官製値下げで泣きのコメントが相次ぐと想定していたが、各社とも来期に向けて力強い発言が目立った。「早期に減収影響をなくしてプラスに転じたい」(ドコモ)、「持続的成長をずっと掲げているので来期も増益に向けてプランを作っていく」(KDDI)、「コンシューマー事業で多少の痛手はあっても他の事業で稼いで増益にしていきたい」(ソフトバンク)などだ。

 大手3社は来期の増益に向けた施策を通期決算の発表時に明らかにする見通し。増益の鍵を握るのは、主に(1)契約数の拡大、(2)非通信領域の拡大、(3)コスト削減の3つである。

 携帯電話事業の収入はARPU(契約当たり月間平均収入)×契約数で決まる。料金下げでARPUが確実に下がるので、まずは(1)契約数の拡大が有力な施策となる。日本の携帯電話の契約数は2020年9月末時点で1億8917万件に達し、他社から奪うしかない。大手3社の顧客は固定通信とのセット割や家族割で囲い込まれているため、狙い目は格安スマホの顧客。KDDIやソフトバンクは「UQ mobile」や「Y!mobile」を通じて毎月の通信量が少ない小容量プランでも攻勢に出ており、格安スマホからの顧客取り込みを当て込んでいると思われる。

 守りの堅い大手3社間で顧客争奪がないわけではない。ドコモは2021年2月5日に開いた決算発表会で新料金プラン「ahamo(アハモ)」の事前エントリーが100万件を突破したと明らかにした。これがそのまま契約数につながるとは限らないが、驚異的な人気である。2020年12月以降はMNP(モバイル番号ポータビリティー)が転入超過(他社への転出を上回ってプラスの状態)を記録した。転入超過は2009年1月以来、約12年ぶりという。

 続いて(2)非通信領域の拡大は文字通り、通信以外の事業拡大である。代表例として挙げられる金融・決済は手数料ビジネスなので利幅は薄いが、各社とも顧客基盤が順調に拡大しているので伸びしろは大きい。特にスマホ決済は現状、手数料無料化や販促キャンペーンなどで持ち出しが多いものの、利用を定着させることができれば大化けする可能性がある。

DX需要を取り込み絶好調

 大手3社は法人ビジネスも絶好調だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で年度当初は低迷も懸念されたが、テレワークをはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要をうまく取り込んで成長に結び付けている。ソフトバンクは「ビジョン・ファンド」投資先のビジネスを日本に持ち込むことで事業多角化を見込むほか、ドコモはNTTコミュニケーションズの子会社化が無事実現すれば来期以降に大幅な上積みを期待できる。

 (3)コスト削減も営業やマーケティング、通信設備の保守などで効率化の余地が多く残っている。筆者は今回の官製値下げによる大手3社への減収影響は甚大とみていたが、冒頭の発言通り、来期も増益を達成する会社が出てきそうな気配だ。大手3社には今回の決算発表で改めて突き抜けた力強さを感じた。最大のリスクは再度の「もうけ過ぎ批判」だろうか。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。