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 NTTドコモとソフトバンクに続き、KDDI(au)が新料金を発表した。「家族割」や「ゼロレーティング」など他社に劣っていた部分を補強しつつ、通信量の上限を撤廃したプランまで投入してきた。筆者が感心したのはアップセル(顧客単価の上昇)を期待できそうな要素が多い点だ。

フラットプラン寄せを強化

 まず「家族割プラス」。ドコモは家族で通信量をシェアするプランを主軸としていたこともあり、3人以上の契約が70%程度、2人の契約が15%程度(ファミリー割引グループの人数)と家族契約の比率が高い。KDDIは家族契約の比率を公表していないが、ドコモほどは高くないはずだ。その分割引による減収影響を抑えられ、家族契約拡大による契約数の増加を見込める。

 次に「新auピタットプラン」については5段階定額から3段階定額に切り替えた。3段階の上限(7ギガバイトまで)に達した場合の料金は月5980円(家族割や光回線とのセット割の適用で4480円。いずれも税別、以下同)。SNSの通信量をカウントしない新料金プラン「auフラットプラン7プラス」の月5480円(同3480円)より高い。

 3段階の中間(4ギガバイトまで)の料金も月4480円(同2980円)と絶妙な水準で、auフラットプラン7プラスとの料金差は月1000円(同500円)。これならauフラットプラン7プラスにしようと考えるユーザーは多いはずだ。

 通信量の制限がない「auデータMAXプラン」も一定の需要を見込めそうだ。KDDIは今回、通信量の上限が月20ギガバイトの「auフラットプラン20」と、同25ギガバイトの「auフラットプラン25 Netflixパック」を残した。毎月の通信量が7ギガバイトを超えるユーザーは両プランが候補となるが、auデータMAXプランを選ぶケースが増えそうだ。

 もっとも、国内初となる容量制限なしの料金プランの導入には賛否が分かれるかもしれない。「大量のデータ通信または長時間接続を伴う場合は通信速度を制限する」と同社の発表資料にある通り、容量無制限は設備への負荷が高くリスクが大きい。今後ユーザーの通信量が確実に増えていくことが想定される中、料金の上限を安易に設けたとの見方もできる。通信量が増えても値上げしにくく、思い切った決断を下したというのが率直な印象だ。

 KDDIによると、端末購入補助がない代わりに毎月の通信料金を安くした「分離プラン」による顧客還元額は2022年3月期時点で約4000億円。今回の新料金プランで1000億円程度の上乗せになるという。

 とはいえ、4000億円がそのまま減収につながるわけではない。顧客還元の原資の一部は端末購入補助の削減であり、アップセルをうまく図れれば減収の影響は抑えられるはずだ。

家族割でガード固める大手3社

 携帯電話大手3社の新料金が出そろったわけだが、最大4割の値下げの恩恵を受けられるのは1ギガバイトの低容量プランが中心。スマートフォンをそこそこ使っていればあっという間に超過してしまう容量だ。

 通信量の増加に応じて料金が自動的に上がる段階制が実質的な標準となったため、結局は通信量が増えて大して安くならなかったとのオチになりそうな気がしてならない。

 新規参入の楽天モバイルや格安スマホに代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)の攻勢に期待したいところだが、気になるのは家族割の影響だ。大手3社はここにきて家族の定義を大幅に緩め、囲い込みを強化してきた。これを切り崩すのは容易ではなく、楽天モバイルは参入前から早々にガードを固められてしまった格好だ。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。