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 総務省が携帯電話市場の競争促進、並びに不健全な慣行の是正に向けた新しいルールを固めた。携帯電話サービスの継続利用を条件とした端末購入補助は一切禁止。継続利用を条件としない場合も端末購入補助は最大2万円(税別、以下同じ)まで。違約金の上限も1000円に定め、期間拘束の有無による料金差は月170円を超えてはならないとした。長期利用割引も携帯電話料金の1カ月分(年間当たり)に制限する徹底ぶりである。

独禁法上の懸念はどこへ行った?

 監督官庁とはいえ、今回はさすがに踏み込み過ぎというのが筆者の率直な印象だ。まず気に掛かったのが、独占禁止法(独禁法)上の懸念である。例えば端末の値引きに対する上限の設定。安倍晋三首相の指示で始まった2015年の料金引き下げ議論でも検討したが、上限を設ければ価格カルテルを誘発する恐れがあるとして見送られた経緯がある。

 今回の議論でも携帯大手と販売代理店による端末値引きの合計額に上限を設けると、「携帯大手が販売代理店に対して再販売価格を拘束することにつながりかねない」という指摘が一部の有識者から出た。もっとも、独禁法に詳しい有識者によれば「法的根拠を新設し、それに基づく規制ならば問題はない。具体的な金額を示さず、総務省と携帯大手の話し合いで是正を促すのはもはや手詰まり。金額まで厳格に明示した今回の規制は透明性の観点で競争政策上、良い選択」とのことだった。

 総務省の有識者会合には公正取引委員会(公取委)もオブザーバーとして参加している。公取委も携帯電話サービスと端末のセット販売や2年縛りといった期間拘束を問題視してきた経緯があり、目指す方向性は大枠で同じ。「手法はさておき、総務省の政策に基づいた要請と鑑みれば異論の余地はない」(公取委関係者)という。

端末の競争は期待薄か

 もう1つの懸念は、ここまで細かく規制すると工夫の余地が狭まることだ。携帯電話市場は大手3社の「協調的寡占」とされるが、横並びにますます拍車がかかりそうである。

 端末とサービスの完全分離を図り、それぞれで競争を促すと言っても限界がある。端末に関しては、米アップルがスマートフォンの国内出荷台数で50%近くのシェアを占める。総務省には「アップル封じ」の狙いもあるとみられるが、これを契機に同社からシェアを一気に奪えそうな端末メーカーは見当たらない。近年、人気が上昇していた中国ファーウェイ(華為技術)は米中貿易摩擦の余波を受けて失速。強力な対抗馬が不在となれば買い控えにつながるだけだ。

 サービスに関しても乗り換えを促すほどの独自色を打ち出すのは容易ではない。結果、料金で競争せざるを得なくなり、新規参入の楽天モバイルや格安スマホ事業者には追い風というのが大方の見立てだが、乗り換えの障壁が完全に無くなったわけではない。

 仮に違約金が1000円に下がっても、MNP(モバイル番号ポータビリティー)で転出する場合は2000~3000円、乗り換え先では新規契約に当たって3000円程度の事務手数料が別途発生する。光回線とのセット割引や移行の手間なども考慮すると、携帯料金が少し下がるくらいでは動かない可能性がある。

 楽天モバイルが新規契約の事務手数料無しで料金競争を仕掛けてくることに期待したいが、同社が「価格破壊」を打ち出せるほどの余裕があるとは思えず、設備面ではどうしても大手3社に見劣りすることになる。結局は携帯大手のサブブランドが最も恩恵を受けたというオチも考えられそうだ。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。