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 KDDIが2022年7月2~4日に起こした大規模通信障害を巡っては、利用者への周知・広報がまずかったとの指摘が多く出ている。金子恭之総務相は7月5日の閣議後記者会見で同社の周知・広報について触れ、「通信事業者としての責任を十分に果たしたとはいえない」「内容、手段、頻度、いずれにしても利用者の不安を解消するために工夫の余地があったのではないか」と苦言を呈した。

 実は、NTTドコモが2021年10月14~15日に起こした大規模通信障害でも、同社の周知・広報が問題視された。交換機の輻輳(ふくそう)を解消するためにかけていた通信規制を解除したタイミングで「一部復旧」と案内した結果、再接続を試みるアクセスが集中し、しばらくつながりにくい状況に陥った。利用者への周知・広報はなかなか難しい面がある。

回復目標を示すも守れず

 KDDIが今回、同社サイトに障害の第1報を掲載したのは、発生から1時間41分後の7月2日午前3時16分。同日午前8時以降はほぼ1時間に1回の頻度で障害情報を更新しており、7月5日の完全復旧宣言まで掲載本数は計81本に及んだ。この頻度での掲載は過去の大規模通信障害でも異例である。

 驚いたのは、7月3日午前1時の掲載情報から「全国的にデータ通信を中心として徐々に回復してきています。西日本は7:15、東日本は9:30を目標として復旧活動に取り組んでいます」などと復旧の見込みを案内し始めたことだ。同日午前2時には「03:00時点では全国の15%程度回復見込みです」、午前3時には「03:00時点では全国の15%程度回復しており、04:00時点では全国の35%程度回復見込みです」といった具合で進捗の実況まで始まった。

 金子総務相は7月3日の臨時記者会見で「KDDIは総務省の要請を受け、本日未明ごろからエリアごとの完全復旧の見込み時刻を1時間ごとにお知らせするなど、復旧に向けた具体的な状況の周知に努めている」と説明した。国民の日常生活や社会経済活動に不可欠な「重要社会インフラ」とはいえ、ここまでの周知・広報が必要なのだろうか。通信障害に限らずシステム障害でもここまでの例は見たことがない。

 一般に、復旧まで時間を要している大規模障害では、様々な事象が複雑に絡んで原因の特定と対処に手間取っているケースが多い。復旧の目安を示せるとすれば、原因を完全に究明できてからになる。総務省は復旧にもたつくKDDIの尻をたたく狙いだったのかもしれないが、KDDIは前述した西日本は午前7時15分、東日本は午前9時30分の目標を達成できずに終わった。その後、利用者がどう解釈すればよいのか分からない「15%程度回復」といった案内は同日午前11時以降なくなった。KDDIは午前11時に緊急記者会見を開いて高橋誠社長が陳謝し、改めて「西日本は午前11時ごろに復旧作業終了、東日本も午後5時30分ごろ復旧作業終了予定」としたが、事態は収まらなかった。KDDIが通信規制をすべて解除し、輻輳の解消に至ったのは7月4日午後3時。障害の発生から61時間25分後だった。

 こうして振り返っただけでも、利用者への周知・広報がいかに難しいかが分かる。携帯各社には障害時の通信規制の割合をはじめ積極的な開示をお願いしたいが、出し方によってはかえって混乱を招いたり、再接続の集中で影響が長引いたりする恐れがある。大規模障害時は電力分野の節電要請のような呼びかけも必要かもしれない。

 総務省は今後、外部有識者で構成する「電気通信事故検証会議」などで「利用者への周知・広報の在り方」についても具体策を検討していくとしており、骨太な指針の策定を期待したい。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。