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 楽天モバイルの契約数が初めて純減となった。同社の2022年6月末時点の契約数はMVNO(仮想移動体通信事業者)分を除くと、477万件。同社は4月時点で500万件を突破したと公表していたので、少なくとも23万件以上減ったことになる。月間データ通信量が1ギガバイトまでは0円としていた旧料金を6月末でやめ、7月以降は最低980円(税抜き)からの新料金に切り替えた影響が出た。

 新料金を巡っては7月から強制移行となることに加え、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「0円でずっと使われても困っちゃうというのが、ぶっちゃけな話」と発言したこともあってSNS(交流サイト)などで物議を醸した。その直後に競合の携帯大手やMVNOから転入が好調との声が出始め、楽天モバイルの契約数の動向に注目が集まっていた。

契約数1200万人の新たな指標

 楽天グループによると、新料金発表後の解約件数のうち8割は月間データ通信量が1ギガバイト未満のユーザー。つまり0円ユーザーが大半なので、解約が増えても大きな痛手ではない。10月末までの最大4カ月間はキャンペーンの適用で実質無料のまま使い続けられるが、今後は有料になる。

 今回の「解約ラッシュ」を乗り切れば、楽天モバイルには明るい材料が多い。設備投資は2021年度と2022年度でピークアウトし、2023年度以降は減少の見通し。2023年中に4Gの屋外基地局は6万局以上に拡大し、人口カバー率は99%超に達する計画だ。

 「つながりにくい」というエリアの問題を解消できれば、弱かった地方部での顧客獲得を強化できる。楽天グループが2022年8月10日に開いた決算説明会では「人口に対して(東京23区と同じ)申込率9.4%を達成できれば(契約数は)約1200万人になる」といった計画も披露した。

 2022年10月には携帯電話の法人向けサービスも始める。楽天グループのクライアント数は40万社以上あり、まずはここに営業攻勢をかける。「競合他社では法人の収益貢献が大きくないかもしれないが、もともと収益構造が低い楽天にとっては大きな利益を出せる。(シェア)25%までは一気にいかなくても、10%に近いところにはもっていける」(三木谷会長)と鼻息は荒い。

 決算説明会では「楽天モバイルの加入者は非加入者に比べ、楽天市場における1人当たりの平均月間流通総額が高い傾向にある」ことも紹介。楽天モバイルの契約数が約1200万人に拡大すれば、楽天市場の流通総額は約15%の押し上げ効果があるとする。三木谷会長の期待と自信はとにかく大きい。

 先行きは明るそうだが、気になるのは「解約ラッシュを本当に乗り切ったのか」という点だ。三木谷会長は決算説明会で日次ベースの解約数の推移を示したうえで、「(新料金に切り替わる)7月の前には0円ユーザーがやめたというのはあったが、かなり落ち着いてきている」とした。確かに解約数の推移を見ると、新料金の発表後に増えているものの、爆発的に拡大している印象は受けず、7月以降は減少傾向にある。筆者は「意外に少ない」どころか、「あれだけ物議を醸したのに強い」と感心してしまった。

 もっとも、SNSを検索すると、解約報告や解約意向のコメントがいまだに多い。少なくとも実質無料が完全に終了する10月末までは目が離せない展開となりそうだ。ある携帯大手幹部は楽天モバイルの0円プラン廃止を受け、「0円ユーザーが多くて相当に厳しかったのかもしれないが、いきなり廃止ではなく、有料ユーザーに引き上げていく努力をもっとすればよかったのに」と指摘した。まさに同感であり、どのような結果となるだろうか。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。