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 NTTドコモは2019年10月29日、3Gの携帯電話サービス「FOMA」を2026年3月末で終了すると発表した。発表資料では理由の1つとして「4Gの普及による市場環境の変化に伴う契約数の減少」を挙げたが、3Gの契約数は2019年9月末時点で2066万件(このうち通信モジュールは650万件)といまだに多い。やけに気が早い印象だ。

 不思議に感じて2Gがどうだったかを確認すると、終了の発表は2009年1月30日(同時期における2Gの契約数は633万件)、実際の終了は2012年3月末だった。発表から終了までの期間は2Gの「3年2カ月」に対し、3Gは「6年5カ月」。NTTドコモは今回、2倍の余裕を持たせたことになる。

 通信方式の変更や周波数の移行に伴うユーザーの移し替えは業界用語で「巻き取り」と呼ばれ、手間と費用がかかる。面倒な手続きが増えるだけなのでユーザーもすんなり移行しないことが多く、「本当に苦労する」と携帯各社が口をそろえる。NTTドコモも過去の教訓を生かして十分な期間を確保したのだろうが、実は販売戦略上の都合も大きいのではないか。

4G移し替えは端末購入補助が可能

 ご存じの通り、2019年10月1日施行の改正電気通信事業法で携帯電話サービスの継続利用を条件とした端末購入補助は禁止となった。継続利用を条件としない場合も端末購入補助は最大2万円に制限され、負担額が先行同型機種の下取り価格を下回ることも不可となっている。

 ただ、例外もある。その1つが、通信方式の変更や周波数移行を目的に販売する端末だ。この場合は「0円未満とならない範囲で利益の提供が可能」である。

 NTTドコモは3G終了と同時に発表した2019年4~9月期決算で、端末機器販売収入の通期計画を従前の6270億円から6520億円に上方修正した。同社は足元の販売が好調とするが、10月以降は端末購入補助の禁止・制限で大きく伸びるとは考えにくい。250億円の積み増し分の多くは3Gから4Gへの移し替えとみられる。11月1日からは4G端末への切り替えで購入代金を最大2万円引きとする「はじめてスマホ購入サポート」も始めた。

 NTTドコモは契約者に占める高齢者の比率が高いことで有名。詳細を開示していないので古い情報になってしまうが、新料金プランの投入を予告した1年前の時点では「フィーチャーフォンの契約数が法人を含め、1700万件近く残っている」(関係者)としていた。コンテンツ系や金融・決済をはじめとした新サービスの多くはスマホ利用が前提のため、移行促進が大きな経営課題となっている。3G終了をうまく取っかかりに活用して切り替えを促していく考えなのだろう。

 競合他社ではKDDI(au)も3G終了を2022年3月末(2018年11月発表)に予定し、4Gへの移し替えを急いでいる。3Gの契約数は2019年4~9月期時点で「数百万件」(高橋誠社長)残っており、端末販売費用の増加で業績の押し下げ要因となっているが、「移行は順調に進んでいる」(同)という。

 前述した端末購入補助の例外規定は自社ユーザーの巻き取りだけでなく、他社サービスへの乗り換えについても適用される。つまり、3Gユーザーは他社に狙われるリスクが高く、早めに手を打つ必要がある。

 端末購入補助の禁止・制限で2019年度の販売台数は2~3割の落ち込みが予想される。そうした中、3Gユーザーの争奪戦は地味に熱くなりそうだ。新規参入の楽天モバイルにとっては契約数を拡大するチャンスだったが、本格展開が遅れたばかりか絶好のタイミングも逃したことになる。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。