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 NTTドコモが2020年12月3日に発表した新料金プラン「ahamo(アハモ)」には度肝を抜かれた。1回5分以内の国内通話がかけ放題なうえ、20ギガバイトのデータ通信量が付いて月額料金は2980円(税別)。新規参入した楽天モバイルや、格安スマホを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)のお株を奪うような安さだ。

 競合のKDDI(au)とソフトバンクは、それぞれ「UQ mobile」や「Y!mobile」のサブブランドで20ギガバイトの新料金を10月28日に発表済み。しかし細かな違いはあれドコモ新料金より1000~1500円高い。

 ドコモ新料金を受け、菅義偉首相は12月4日の記者会見で「本格的な競争に向けた1つの節目を迎えた。本当の改革はこれから」と話した。携帯料金が下がるのは消費者にとってありがたいが、通信業界は「NTTが本気で競合を潰しにきた」と大騒ぎになっている。

原価割れで追随できない

 多くの業界関係者の共通した見方が「楽天潰し」だ。楽天モバイルは自社エリアにおいてはデータ通信が使い放題という点で優位性は残るものの、毎月の通信量が20ギガバイト以内であれば、エリアが充実したドコモのほうが安心と考えるユーザーは多そうだ。

 楽天モバイルは300万人を対象に1年無料を打ち出したにもかかわらず、申込数は2020年11月12日時点で160万件を突破した程度。楽天の三木谷浩史会長兼社長が2020年5月の決算説明会で700万人とした損益分岐点の早期達成は怪しくなってきた。KDDIやソフトバンクもドコモに対抗してくると想定すると同社も次の一手がほしいところだが、さらに低廉な料金プランを投入したり値下げしたりすれば採算ラインがさらに上がってしまう。

 苦しい事業展開が予想されるのはMVNOも同じだ。音声通話やデータ通信をそれほど利用せず維持費をとにかく安くしたいというニーズもあるため、直ちにユーザーを奪われるとは限らない。ただ、音声通話やデータ通信の利用が比較的多い「優良顧客」がドコモなどに流れる恐れがある。

 日本通信のようにドコモ対抗プランを打ち出し気を吐くMVNOもあるが、他のMVNOからは「ahamoと同じ料金を実現しようとすると原価割れになる」と嘆きの声が出ている。「仮に最大手のドコモがMVNOに提示している卸料金や接続料を大幅に下回る原価計算に基づきahamoを提供しており、MVNOがどう頑張っても実現できないのであれば『不当廉売』に当たるのではないか」(あるMVNO)という意見もある。それほどahamoは安いのだ。

 武田良太総務相は12月4日の閣議後記者会見でMVNOへの影響を問われ、「MVNOもそれなりの経営努力をしていただかなくてはならない」とした。MVNOを見放したかのような発言が話題を呼んだが、総務省には大手3社に値下げを求めるだけでなく、値下げ後の業界のあるべき姿を含め、丁寧に政策を検討してもらいたいところだ。

 ドコモの新料金は総務省で始まった公正競争の確保に向けた議論にも少なからず影響を及ぼしそうだ。ある携帯大手幹部は「NTTは本気で我々を潰しにきており、ドコモの完全子会社化で巨大化する弊害が早くも顕在化した。当初は減収かもしれないが、NTTだからこそあれだけの値下げを吸収できる。我々とはあまりにも体力が違いすぎる」と憤りを隠さない。NTTは新料金で政府に恩を売った格好だが、MVNOを含めた多くの事業者を敵に回し、競合他社の反発を増大させたとも言えそうだ。

 業界が激震したドコモ新料金。同社が12月中に発表を予定する既存料金プランの見直しではどのような衝撃が待ち構えているだろうか。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。