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 NTT東西の加入電話から携帯電話に発信した際の通話料金をご存じだろうか。着信先に応じて異なり、3分当たりの通話料金(平日昼間、区域内)はNTTドコモ宛てが60円、KDDI(au)宛てが90円、ソフトバンク宛てが120円である(税別、以下同じ)。

 この「固定発・携帯着」の通話料金は、中継電話サービスを利用すれば3分当たり48~60円程度で済む。ただし、こうした割引を使わない場合、KDDI宛てとソフトバンク宛ての通話料金は突出して高いことになる。総務省によると、10年近く高止まりの状況が続いている。

 固定発・携帯着の通話料金が高止まりしているのは、着信側の携帯電話会社(楽天モバイルを除く)が通話料金をそのように設定しているから。ユーザーは電話をかける相手が通話料金の高い携帯電話会社と契約しているからといって、発信をやめようとはならない。携帯電話会社側に通話料金を下げるインセンティブが働かず、競争も機能しないのだ。

 しかも不可解なことに携帯電話大手3社で通話料金に大きな開きがある。ドコモを基準にすると、KDDIは1.5倍、ソフトバンクは2倍の水準だ。固定発・携帯着の通話で料金設定権を持つのは携帯電話会社側で、発信元(NTT東西)から通話料金をそのまま徴収している。その代わりに発信元に対して接続料を支払っている。NTT東西の接続料は接続形態によって異なり、3分当たり7.47円または8.71円(2020年度)。接続先に関係なく一律のため、ここまで差が開くのは解せないのだ。

「約10年間高止まりで申し訳ない」

 この問題はかねて指摘されてきたが、料金設定権は通信会社同士が協議して決めるのが原則である。総務省はこれまでも料金設定権を発信側(NTT東西)に移行すべく通信会社同士の協議を促してきたが、遅々として進まなかった経緯がある。

 ところが、ここにきて急に様相が変わってきた。総務省が2020年11月に開いた有識者会議でこの問題が改めて俎上(そじょう)に上り、現在はできるだけ速やかに見直すべきだという話になっている。一部の有識者からは「認識が十分ではなかったと反省している。約10年間高止まりで利用者に大きな負担をかけていたことを申し訳ないと思う」といった発言まで飛び出た。システム対応が必要となるので一定の時間はかかるとみられるが、2021年中にも料金設定権の移行が実現しそうな勢いである。

 もっとも固定電話発の通話は年々減少傾向にある。総務省によると、2018年度における固定電話発の通信回数は152億7000万回、通信時間は4億1690万時間。2014年度に比較して前者の通信回数は約41%、後者の通信時間は約46%減少した。今回の見直しの動きは大変喜ばしいことだが、通信業界では知られた問題だっただけにもっと早く動けなかったのかという点がどうしても悔やまれる。

 一方、携帯電話大手3社は少なからず打撃を受けそうだ。固定電話発の通話は減少しているとはいえ、2018年度における固定発・携帯着の通信時間は6330万時間(37億9800万分)もある。ドコモの通話料金(3分60円)で試算すると、約760億円の市場規模に相当する。料金設定権を失う代わりに接続料が入るとしても、高止まりしていた固定発・携帯着の通話料金収入を失うのは手痛い。

 携帯電話大手3社は菅義偉政権の要請に起因した料金引き下げだけでなく、MNP(モバイル番号ポータビリティー)転出手数料をはじめとした各種手数料の無料化なども進めている。これらの積み重ねで各社とも大きな打撃を受けることになりそうだ。

榊原 康(さかきばら・やすし)
1996年日経BP入社。システム構築関連の雑誌を経て、2005年以降は通信業界の動向を中心に追っている。著書に「キレるソフトバンク」「NTT30年目の決断」(いずれも日経BP)など。