米フェイスブックや米グーグルは日本人の想像を超えて本国である米国で嫌われている。市場の健全性や市民の生活を脅かす存在だと認識されているのだ。2019年6月18日(米国時間)にはそれを裏付ける事件が2つ起こった。

 1つはフェイスブックが発表した仮想通貨(暗号資産)「Libra(リブラ)」に対する米議会の反応だ。米下院金融サービス委員会のマキシン・ウォーターズ委員長がフェイスブックによるLibraの発表直後、開発停止を求める声明を発表したのだ。大手金融機関にべったりの議員が金融機関の既得権を守るためでも、フェイスブックや仮想通貨をよく知らない守旧派がテック企業の排除に動いたわけでもない。

 そもそもウォーターズ委員長は米民主党の所属で、カリフォルニア州選出の下院議員である。米ゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューシン氏が財務長官を務めるトランプ政権の米共和党と異なり、民主党は大手金融機関への規制強化に積極的だ。ウォーターズ委員長は2019年4月に米大手銀行7行のCEO(最高経営責任者)を公聴会に呼び、情報公開に消極的だとして激しく批判していた。

 テック企業のお膝元であるカリフォルニア州選出のウォーターズ委員長はフェイスブックの最近の行状もよく理解していた。同委員長はフェイスブックがユーザーのプライバシー保護をないがしろにしてきた点や、フェイクニュースを拡散するアカウントを野放しにした点などを列挙した上で、フェイスブックによる仮想通貨ビジネスへの参入に待ったをかけた。

住宅に10億ドル投じるグーグル

 もう1つの事件はグーグルに関するものだ。スンダー・ピチャイCEOが声明を発表し、グーグルが本社を置くサンフランシスコベイエリア地域に今後10年間で10億ドルを投資し、あらゆる所得階層の市民が利用できる住居を用意できるようにすると発表した。

 グーグルは近年、同社が高給を支払う従業員が増えるのに伴いサンフランシスコベイエリア地域の家賃が高騰し、低収入の住民がこの地域に住めなくなったとして批判を集めていた。特にサンフランシスコ市民の怒りは激しく、同市に住む従業員がシリコンバレーにあるグーグルのオフィスまで通勤するのに使うバス、通称「G Bus」が抗議活動のターゲットになった。

 グーグルの発表はこうした市民の怒りを和らげ、同社を「住民にとっての良き隣人」(ピチャイCEO)にするためのもの。具体的には同社が取得した7億5000万ドル分のオフィス用地を転用し、1万5000軒の住宅を建設できるようにするほか、不動産開発業者に2億5000万ドルの補助金を出す。同社によればシリコンバレーで2018年に新築された住居は3000軒。5年分の住宅供給をグーグル1社で追加するというのだ。

アマゾンに対しても地元の反発

 テック企業の雇用拡大によって不動産価格や家賃が高騰する―。こうした問題は米アマゾン・ドット・コムが本社機能を拡大しているシアトルでも発生している。同社が「第2本社」をニューヨークに置く計画が撤回に追い込まれたのも住環境の悪化を懸念する地元住民の反発が大きかったためだ。

 米国世論はGAFAの膨張を苦々しく見始めている。民主党の有力議員であるエリザベス・ウォーレン氏は2020年の米大統領選挙に向けた公約としてGAFAの会社分割を主張している。様々な産業をディスラプション(破壊)しようとするGAFAの進撃を世論がストップすることになるのか。2020年に向けて米世論の動向にますます注目する必要がありそうだ。

中田 敦(なかだ・あつし)
中田 敦(なかだ・あつし) 日経xTECH/日経コンピュータ副編集長。1998年日経BP入社。2015年4月から19年3月までシリコンバレー支局長。著書に「クラウド大全」(共著)や「GE 巨人の復活」がある。