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 Google Cloud Platform(GCP)という名称は無くなったんです」。先日、あるシステムインテグレーターからこう伝えられて驚いた。PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)とIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の総称であるGCPという名称は廃止となり、単に「Google Cloud」とだけ呼ぶようになったというのだ。

 そのシステムインテグレーターはグーグルのパートナーとしてGCPを販売しており、顧客向けのドキュメントなどの修正に追われているという。クラウドに関する記事を書く我々にとっても重要なのでグーグルの広報部門に確認したところ、情報は本当だった。

G SuiteとGCPが同時に消滅

 名称が廃止されたのは2020年10月で、グーグルがSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)であるG Suiteを「Google Workspace」に改称したのと同じタイミングだった。これまでGoogle Cloudというのは同社のクラウド事業の総称で、その下にSaaSであるG SuiteとPaaS/IaaSであるGCPが存在していた。

 もっともグーグルとしても「Google Cloud PlatformやGCPという名称を使わないでください」と伝えているのは社内やパートナー相手だけで、顧客や我々メディアには特に周知していないという。実際、G SuiteからGoogle Workspaceへの改称に関してはプレスリリースが出ている一方で、Google Cloud Platform/GCPの名称廃止については発表が無かった。

 顧客にとってのメリットがよく分からない名称変更を敢行する最近のグーグルに対して、筆者はある思いを抱いてしまう。「嫌なところが米マイクロソフトに似てきたな」と。製品やサービスに関する分かりにくい変更をよくするベンダーと言えば、マイクロソフトである。2020年4月には同社のクラウドサービスだったOffice 365の名称を、それまでは法人向けのセキュリティーサービスを中心としていた「Microsoft 365」に一元化した。

 しかしOffice 365の名称を巡っては、同社内でも混乱しているらしい。2020年9月に開催したMicrosoft Igniteに際して、セキュリティー製品の名称を大きく変更した。Microsoft 365関連のセキュリティー製品については「Microsoft 365 Defender」という総称を設けた。そしてMicrosoft 365 Defenderの下に、EDR(エンドポイント・ディテクション&レスポンス)のMicrosoft Defender for EndpointやID保護のMicrosoft Defender for Identity、電子メール保護のMicrosoft Defender for Office365を位置付けた。

 つまり電子メール保護の名称を「Microsoft Defender for Microsoft 365」とすると、「Microsoft 365 Defenderの下に、Microsoft Defender for Microsoft 365がある」というよく分からない状況になってしまう。だからマイクロソフトはOffice 365の名称を使わざるを得なかったのだろう。オフィスアプリケーションのクラウドを指す名称が無いのは色々と面倒なので、これを機にOffice 365の名称を正式に復活させてもらいたいところだ。

 2020年10月に米司法省はグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した。司法省がIT大手を反トラスト法違反で提訴したのは1998年のマイクロソフト以来だったことから、「グーグルを巡る状況が20年前のマイクロソフトに似ている」という指摘を目にするようになった。しかしグーグルがマイクロソフトに似てきたのは、それだけではない。市場競争を阻害する行為も、よく分からない製品名称の変更も、顧客にとって益はないので、本当にやめてほしいと願っている。

中田 敦(なかだ・あつし)
日経クロステック/日経コンピュータ副編集長
中田 敦(なかだ・あつし) 1998年日経BP入社。2015年4月から19年3月までシリコンバレー支局長。著書に「クラウド大全」(共著)や「GE 巨人の復活」がある。