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テレワークに従来型のマネジメントを持ち込むと部下のやる気をそぐ。実話をベースにした架空ストーリーを通じて、上司が犯しがちな「禁じ手」を3つ紹介する。

 「企画書の進ちょくは順調ですか?予定通り午後2時に見られますか?」

 都内の大手製造業のIT部門に所属する中堅システムエンジニア(SE)のタナカさんは、上司のオノ課長から送られてきたテキストチャットのメッセージを見て「またかよ…」とうんざりした表情を見せた。

 オノ課長は普段から部下の仕事を細かく管理する「マイクロマネジメント」型の上司だ。部下の自主性を重んじて任せるよりも、こまめに声がけをして手を打つ。

 ある意味で面倒見の良い上司だが、全社でテレワークが始まると、マイクロマネジメントが度を超すようになっていた。毎朝10人の部下一人ひとりにテキストチャットで1日のタスク目標を報告させたうえで、テキストチャットを使って頻繁に進ちょくを聞くようになったのだ。ひどいときは30分おきにメッセージを送る。タナカさんはそのたびに仕事の手を止めて「今のところ予定通りです」と返信した。

 タナカさんは次第にオノ課長からのメッセージを無視するようになっていた。それに業を煮やしたオノ課長はタナカさんに電話をかけ「なぜチャットを見ないのか。仕事にならないだろう」と声を荒らげた。タナカさんは言い返さなかったが、オノ課長への信頼感をすっかり無くしていた。

(イラスト:今竹 智)
(イラスト:今竹 智)
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 新型コロナウイルス対策のため、これまでテレワークに取り組んでこなかった企業や、一部の社員だけがテレワークをしていた企業でも、全社的な導入が始まった。筆者は自身のリモートワーク歴20年で、最近はWeb会議やWeb面接の指導を行う。その中でこのような話をしばしば聞く。

 オノ課長がしつこく進ちょくを聞くようになったのは事情がある。オフィスで仕事をしていたとき、部下の席を歩き回って声がけしていた。テレワークでもテキストチャットを使って同じことをしようと思ったのだ。

 しかし部下の様子を目で確認できないこともあり、手当たり次第に進ちょくを聞くようになった。「予定通りです」のようなぶっきらぼうな答えが返ってくるので、余計に心配になりメッセージを連発していた。

 オノ課長は悪気があるわけではないが、テレワークのノウハウが欠如している。テレワークには特有のノウハウが必要だ。

 ではオノ課長はどうすべきだったのか。それは部下一人ひとりに合わせてマネジメント方法を変えることだ。例えば中堅クラスのタナカさんに対しては、タスクで行き詰まるか、完了したときに報告するよう指示すればよかっただろう。中間のチェックポイントとして、企画書のある項目まで書いたら提出させてもよい。普段からタスクの納期を守る部下については、報告の頻度を自分で決めさせてもいいだろう。

 テレワークでは上司が部下の様子をつぶさに把握するのは難しい。コミュニケーションが煩雑になるし、部下からすれば監視されている気持ちになる。上司が部下をさりげなく観察できるオフィスとは違う。