全4659文字

非同期ストリーミングの活用により基幹システムの機能は比較的容易に拡張できる。既存システムに手を入れる必要がないなどデータ横流しの効果は大きい。トピックを使い在庫計算機能もクラウドネイティブで再構成した。

 三越伊勢丹のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する目的で、筆者らは基幹システムとの連携を容易にするための「ビジネスプラットフォーム」を用意しました。ビジネスプラットフォームでは多くの部分で、Apache Kafkaをベースにした非同期ストリーミング処理を利用しています。

 今回は、非同期ストリーミング処理を利用したDXツールの開発や、ビジネスプラットフォームを介した基幹システムのモダナイズについて、具体的な取り組みを紹介します。

受注データを非同期に横流し

 DXツールの代表がECシステムにおける機能追加です。三越伊勢丹は百貨店であるため、洋服、食品、宝飾品、大型家具など、多種多様な商品を販売しており、その販売形態や在庫の保管場所もさまざまです。販売数が少量であることも多く、宝飾品などは1点ものも少なくありません。

 またここ数年、新型コロナ禍の影響もあり、従来は店頭のみで販売していた商品をオンラインとの併売に切り替えたり、一部の商品について在庫保管場所の最適化などが推進されています。オンライン販売の受注の入り口としてはECサイトでよいのですが、その後の配送についてさまざまなニーズが増えてきました。

 これらはDXの文脈で考えられており、デジタルツールを活用することで顧客への価値向上とともに、業務負荷の軽減も求められていました。

 こうした機能改善について、従来であればECサイトの受注や配送に関する管理システムを改修していました。しかし、こうした案件は売上規模が大きくないこともあり、そこに対するシステム改修費としてはふさわしくないことが想定されました。多様な商品形態を扱う百貨店であるがゆえに、DXのデジタルツールにも多様性が求められたのです。

 そこで、顧客の決済処理までは従来のECシステムのままで、受注したデータを非同期ストリーミングで横流しし、そのデータを活用するデジタルツールを個別に開発する方式にしました。もちろん、受注データのトピック(Topic)をビジネスプラットフォーム上に用意し、デジタルツールはDevOps基盤で開発しています。

図 ECシステムの拡張
図 ECシステムの拡張
データを非同期で横流ししてシステム改善
[画像のクリックで拡大表示]