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 政府は2020年5月25日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を全面解除した。だが解除後もクラスター発生の分析などで引き続き「人」の動きの把握が重要になる。

 政府や自治体は人々の接触機会を減らすため、ビッグデータを活用して新型コロナ対策に役立ててきた。これまでにないビッグデータ活用を支えたのは、IT企業や通信事業者の各社が提供した統計データだ。

表 新型コロナウイルス対策に活用される各社の統計データ(2020年5月20日現在)
データ取得方法は基地局型とGPS型に二分
表 新型コロナウイルス対策に活用される各社の統計データ(2020年5月20日現在)
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 各社は以前からビッグデータビジネスを展開しており、顧客企業が商圏分析やユーザー調査などに用いるほか、政府・自治体も観光振興やまちづくりなどに活用してきた。新型コロナの感染拡大を機に、政府や自治体のビッグデータの活用が加速した格好だ。

 きっかけは2020年3月31日に遡る。政府は人流の把握とクラスターの早期発見を目的に「感染拡大防止に資する」データの提供を企業に要請。これに対し、NTTドコモ、ソフトバンクのデータ事業子会社Agoop(アグープ)、Zホールディングス傘下のヤフーが厚生労働省に統計データを提供するなど、呼応する動きが広がった。3社のいずれのデータも、全国の特定エリアで人口がどう増減したかについて、保有する統計データを基に推計したものだ。推計の基となるデータは個人が特定されないように統計処理を施してある。

 政府では主に厚労省と内閣官房がビッグデータ活用を進めた。厚労省では北海道大学の西浦博教授らが参画する新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班が活用し、人流の分析や「接触頻度」の計算などに使っている。

 内閣官房は国民に向けた「人流の減少率」の広報に活用中だ。3社などが提供する分析データやリポートを生かし、その一部を内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策」サイト上で、全国主要駅・繁華街における人の流れの推移や、都道府県間の人々の流動状況などを日々表示している。多くの自治体でもビッグデータを活用して地域住民の行動変化を分析し、Webサイトに掲載する取り組みを進めている。