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営業には、短期間で受注できる商談と時間を要する中長期商談とがある。前者は顧客との折衝が中心となり、後者はフォロー対応が求められる。作業とその目的が異なるため、担当者には違うスキルや特性が必要だ。

 この連載では主にシステムエンジニア(SE)出身の営業担当者に向けて、効果的に営業活動を展開するチーム営業の進め方を説明します。

 今回はケーススタディーとして、短期商談と中長期商談の作業分担をどのように決めるかを紹介します。

 問い合わせを受けた顧客を訪問した。商品を購入する意思はあるようだ。しかし、すぐに購入する雰囲気はなく、時間がかかりそうだ──。このようなケースは珍しくありません。「今期は予算が取れない」「使用中のシステムの償却が終わっていない」など、理由は様々です。

 営業を担当するあなたは、どのような手を打つべきでしょうか。早期導入を促す、というのは一つの手です。

 「新システムを導入するとこれだけの効果が見込めます。特別予算を計上してでも、早期に導入するとメリットがあると思うのですが、いかがでしょうか」

 こう話してもうまくいくとは限りません。むしろどう説明しても早期導入は難しい、という場合がほとんどでしょう。

短期商談と中長期商談は異なる

 受注するために営業折衝している以上、潜在顧客に「いつ発注をいただけるか」を常に意識して進める必要があります。

 すぐに購入に至らない場合も、このことが当てはまります。短期間で受注できる「短期商談」でないことが分かったら、受注までにそれなりの期間を要する「中長期商談」として営業に臨む必要があります。

 営業の進め方は、短期商談と中長期商談で大きく異なります。

 短期商談では、顧客と密にやり取りする「折衝」が中心になります。顧客にできるだけ早く発注してもらうために、最適なストーリーと様々なテクニックを駆使して進めていく必要があります。

 これに対し、中長期商談で中心となるのは、顧客の「フォロー」です。短期商談のように、密にやり取りしたり、押したりする必要はありません。

図 短期と中長期で異なる営業のストーリー
図 短期と中長期で異なる営業のストーリー
短期商談では「折衝」、中長期商談は「フォロー」
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 短期商談と中長期商談で作業が異なるのは、そもそも作業の目的が違うからです。短期商談での作業の目的は受注、すなわちクロージングです。一方、中長期商談での作業の目的は、クロージングのタイミングの把握やコントロールとなります。

 もちろん、営業に関わる全ての作業は最終的に受注を目指すものですが、中長期商談での作業は直接的に受注を目的としているわけではありません。

 クロージングのタイミングの把握とは、クロージングに向けた営業活動を実施するタイミングを見極めることを指します。

 先ほど、商談が中長期化する理由として「今期は予算が取れない」「使用中のシステムの償却が終わっていない」などを挙げました。前者なら「来期予算を検討する」、後者なら「システムの償却が終了する」タイミングとなります。こうしたタイミングを逃さずに、中長期商談から短期商談に切り替え、クロージングに向けた活動を展開するわけです。

中長期商談も攻めの姿勢が大切

 ここで、「そのタイミングが来たら連絡すればいい」と単純に捉えるのは禁物です。クロージングのタイミングは変化するからです。

 「今期は予算が取れない」と言っていた企業の業績が好転し、今期内のシステム投資が可能になるケースがあり得ます。競合会社が営業攻勢をかけて、顧客が早期導入に傾くかもしれません。そうなると「そろそろ打診するときだ」と思って顧客に連絡しても、「もう他社のシステムを導入することに決めました」と言われてしまうでしょう。

 これは実際によくある話であり、筆者も過去に何回か経験しています。クロージングのタイミングは変化する。こうした前提で営業ストーリーを作り、作業を進める必要があります。

 より有効なのは、中長期商談でのフォローを「待ち」ではなく、「攻め」の姿勢で進めることです。タイミングの変化を待つのでなく、自らタイミングを変えていくわけです。

 例えば、「顧客と同じ業種や業界の事例を提供する」「導入メリットを具体的に訴求する資料を提供する」「経営者やキーパーソン向けのセミナーを案内する」といった働きかけをします。

 狙いは中長期商談を短期商談に変えることにあります。クロージングのタイミングのコントロールといえます。