チーム営業は複数のスタッフが分担するため「情報の分断」が生じる。この欠点をカバーするのがCRMやSFAといったシステムである。営業ストーリーを細かく修正し、「PDCAサイクル」を回すのに必須だ。
この連載では主にSE出身の営業担当者に向けて、複数のメンバー(スタッフ)で効果的に営業活動を展開する「チーム営業」の進め方を、筆者の経験とノウハウを基に説明します。
チーム営業での作業分担を決める方法を説明し、短期商談と中長期商談の作業分担について前回まで説明しました。今回はチーム営業の欠点と、その克服策としてCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)といったIT(情報技術)をどのように生かせばよいかを取り上げます。
「情報の分断」は構造的な問題
チーム営業では営業の作業を分解し、それらの作業を各営業スタッフに最適な形で割り当てることで、効率化と効果の向上を促します。筆者が提唱する営業の進め方である「ロジカルセールス」の根幹を成すもので、効果も実証済みです。
ただチーム営業には欠点があります。作業を分けて分担するので「情報の分断」が生じるのです。
個人営業と組織営業には違いがあります。個人営業では、1人の営業スタッフが案件に関する全ての営業折衝を担当します。これに対し、組織営業では1つの案件を複数のスタッフが分担するのが基本です。チーム営業は組織営業を分業制で実践するものです。
個人営業は営業の進め方が属人的になり、効率は良くありません。一方で、同じスタッフが案件に最初から最後まで関わるので、案件や顧客に関する全ての情報を把握できるという利点があります。
複数のスタッフで進める組織営業では、案件や顧客に関する情報の全てを1人のスタッフが把握するのは不可能で、顧客や商談の内容を他のスタッフに確認しつつ作業する必要があります。「いちいち確認するのは面倒だ。自分が分かる範囲で対応しよう」と考える人が出てくるかもしれません。
しかし、それではチーム営業で効果を上げるどころか、大きく下げることにつながりかねません。
CRMやSFAで情報分断を解消
こうしたチーム営業の弱点をカバーするには、CRMやSFAといったシステムを活用するのが有効です。これらを使うと、営業活動で発生する情報を顧客や案件とひも付けて一元管理できます。これが情報の分断解消につながるわけです。
CRM、SFAとは何かをまず説明しましょう。
CRMは「顧客管理システム」です。顧客の情報や状況、顧客とのやり取りのように、「顧客」を軸とした情報を一元管理します。細やかな顧客対応を実現するのが狙いです。
一方、SFAは「営業支援システム」です。ルールに従った営業活動(訪問など)を促し、その活動情報を一元管理するために使います。
CRMとSFAは連携して使ってこそ効果を発揮します。営業ストーリーの進捗は、顧客や商談の情報にひも付いているからです。CRMとSFAを連携させて、それぞれの情報を関連付ける必要があります。
実際のところ、CRMやSFAはチーム営業に限らず、営業活動全般で効果を発揮します。営業に必須の道具といっても過言ではありません。