プライバシー保護意識の高まりを受け、利用者データの収集・活用方法の見直しが世界で進む。IT業界の巨人、米グーグルと米アップルも例外ではない。両社が率先する利用者データ「クッキー」規制の動きは、あらゆる企業にネット事業戦略の再考を迫る。
データミニマイゼーション(最小化)――。米グーグルと米アップルは、それぞれが取り組むプライバシー保護活動の基本方針をこう称する。
自社のサービスやIT機器を通じて収集・保存する利用者関連データを最小限に抑え、パートナーや取引先の企業との間でもできるだけ共有しない。GAFAの一角として、膨大なデータを収集・蓄積してきた両社の事業方針に照らせば、正反対とも思える方針だ。
「データミニマイゼーションに注力し、より少ないデータでより多くのことができるようにしてきた」。グーグルのスンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)は2021年5月、年次イベント「Google I/O 2021」の基調講演でこう述べた。既に「Googleアカウント」で、利用履歴データを18カ月で自動削除する機能を初期設定で有効にしている。現在、20億件のGoogleアカウントで同機能が動いているという。
アップルのティム・クックCEOもデータミニマイゼーションを訴える。「利用者を欺いてデータを搾取して成り立っているビジネスは、称賛に値しない。私たちは位置情報から連絡先や写真まで、あらゆるデータの最小化や利用者による制御、機器上での処理に関する新しい業界標準を設定した」。2021年1月、プライバシーに関する国際会議「CPDP2021」でこう述べた。