サードパーティークッキーを代替する技術の本命争いが激しさを増してきた。米グーグルが提唱した新技術「FLoC」には批判が噴出。対抗するかのようにオープンな共通仕様の策定が加速するなど、先行きは混沌としている。
「利用者の関心に基づく広告の新しいアプローチだ。プライバシーを向上させ、媒体企業の広告ビジネスモデルに必要なツールを提供する」――。米グーグルのマーシャル・ベイル氏はサードパーティークッキー代替技術「FLoC(Federated Learning of Cohorts、フロック)」をこう説明する。
同社は2021年3月30日、Webブラウザー「Chrome」のバージョン「89」でFLoCの開発者向け試験を始めた。日本のほか米国、インドなど計10カ国を対象に、順次増やすとしている。
プライバシーと効果を両立と主張
FLoCは機械学習の一種である連合学習(Federated Learning)を使ったデータ分類技術だ。パソコンやスマートフォンなどの端末側でモデルを学習させ、その結果をサーバーに集約し、再び端末側に戻す。Webサイトの閲覧履歴など端末側のデータそのものをサーバーへ送らないため、プライバシーを保護しつつAI(人工知能)を効率的に学習させられるとする。
「利用者をWeb上の群衆の中に隠せる」。グーグルはFLoCのプライバシー保護方針をこう表現する。利用者の最近のWeb閲覧履歴に最も近い利用者グループ(コホート)をChromeが自動的に判断し、似た閲覧履歴を持つ数千人から成るコホートへと利用者を割り当てる。利用者がグーグルや一般のWebサイトと共有するのはコホートの情報のみで、Web閲覧履歴そのものは端末側だけに保存する。
グーグルは「機密性が高くセンシティブな話題を含むと判断されるグループを作成しない」ともしている。具体的には、病気や医療関連、政治、宗教などの話題を含むWebサイトが対象だ。ChromeはコホートIDを計算する際、利用者が高い確率でこれらのサイトを訪れていると判断したらこのコホートが使われないようにする。
グーグルが広告主企業とともにFLoCによるコンバージョン率(購入やアプリのダウンロードなど何らかの行動に至った割合)を検証したところ、投資1ドル当たりのコンバージョン率はクッキーに基づく広告の95%以上を見込めると分かったという。
同社は条件によって結果は変わると断ったうえで、「検証結果とソリューションが一般の利用者や(ネット広告を掲載するメディア企業などの)パブリッシャー、広告主に提供する価値に大きく期待している」と説明する。