1人1台端末の利用に不可欠なのが快適なネットワーク環境だ。クラウドの活用が前提となるなか、WANが遅ければ学習に支障を来す。千葉県柏市と奈良市の取り組みは「GIGA時代」の参考になる。
「計画を掲げた当時と1人1台端末を使うGIGAスクール構想が始まった現在では、学校で使う端末の台数が圧倒的に違う」。柏市教育委員会の西田光昭教育研究専門アドバイザーはこう指摘する。
GIGAスクール構想が発表される前の2018年、文部科学省は「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」を策定し、2018年度以降の学校のICT環境の整備のための地方財政措置を講じた。計画では小中学校3クラスに1クラス分の端末やその台数を前提としたWANの整備などを見込んでいた。
一方、GIGAスクール構想の予算措置は生徒に配布する端末と校内LANの整備にかかる費用などが対象で、当初WANを整備する予算は1人1台環境以前の計画に基づく予算措置で賄われた。つまり「1人1台」の3分の1を想定していたことになる。端末数が想定の3倍に増え、通信量の増加に苦慮する自治体が少なくないのが現状だ。
学習系と校務系を分ける
現状、学校のWANはどうなっているのか。iOSコンソーシアムの野本竜哉代表理事は「学校から外部ネットワークにつなぐ回線は、教育委員会のサーバーにまとめる『センター集約型』が多い」と話す。ただし「集約してから先のインターネットにつながる回線は1本しか整備していないケースが多く、ネットワーク帯域を圧迫する可能性がある」(同)。
この点を考慮したのが千葉県柏市だ。柏市はセンター集約型の構成を残しつつ、トラフィックを学習系と校務系に分けてデータセンターに集中しない構成を採る。具体的には児童・生徒が授業などで使う学習系ネットワークと校務系ネットワークを分離。さらに学習系は市内の小中学校63校を15のブロックに分け、1ブロックを4~5校としてデータセンター内に複数用意したルーターにつなぐ。そこから学術情報ネットワークのSINETを介してクラウドサービスを利用する。
SINETが小中学校に開放されるのは2022年度の予定だが、柏市は市内の大学との共同研究という位置付けでSINETに接続した。