GIGAスクール構想によって多くのITベンダーが教育現場に深く入り込む。端末のOSからクラウド基盤に至るまでIT大手の存在なしに学校DXは成り立たない。IT大手と教育とのかかわりからGIGA時代の学校ICT環境をひも解く。
2021年4月20日、電子情報技術産業協会(JEITA)は2020年度(2020年4月~2021年3月)のノートパソコンの出荷台数が前年度比56.1%増の1077万台になったと発表した。テレワーク需要とともに、GIGAスクール構想によって自治体が児童・生徒用の端末調達に動いたことが主な増加の要因だ。
「GIGAスクール特需」に沸くITベンダーだが、学校とのかかわりは一過性の端末調達で終わるわけではない。これからより長く、深く、これまで以上にITベンダーが教育現場にかかわっていくことになる。
児童・生徒、そして教員にとって特に身近なITベンダーは学習用端末のOSを提供する3社だろう。学習用端末のOSは米グーグルの「Chrome OS」、米アップルの「iPad OS」、米マイクロソフトの「Windows」の3種類が占める。2021年2月に調査会社のMM総研が発表した調査結果によると、Chrome OSのシェアは43.8%、iPad OSは28.2%、Windowsが28.1%だった。同調査によれば、端末メーカー別ではアップルが28.1%でトップシェアだった。各OSのシェアは混戦模様で、その「勝敗」はなかなか判断しがたい。その混戦模様の中から各社の強みを生かした「新しい学び」へのアプローチの違いが読み取れる。以下では学校ICT環境に深くかかわるITベンダーの取り組みを見る。
マイクロソフト
働き方改革と教え方改革は両輪
「教員の働き方と教え方、そして児童・生徒の学び方。この3つはつながっている」。日本マイクロソフトでパブリックセクター事業本部文教営業統括本部の統括本部長を務める中井陽子業務執行役員はこう話す。GIGAスクール構想では教員が使うための学習用端末が補助対象となっていないものの、教員は校務用パソコンを持っている場合が多い。そのOSの大多数はWindowsであり、多くの教員はWindows搭載端末の使い方に慣れている。
「教育機関向けの統合型情報共有クラウドサービスであるOffice 365 Educationを提供し始めた2012年当初から、まずは教員が使い始めて職員室での業務、そして授業にも活用してもらい、教員から児童・生徒に広げるアプローチを採ってきた」(中井業務執行役員)。
同社は教員向けに「Microsoft 教育センター」というオンラインのプラットフォームを開設している。60を超えるラーニング動画を配信し、授業の進め方だけではなく、児童・生徒の健康状態の把握といった校務に関するICT活用事例も無償で紹介している。1カ月当たり平均4000人を超える教員が利用しているという。
日本の教員の仕事は激務といわれる。GIGAスクール構想は1人1台端末に焦点が当たることが多いが、教員の働き方改革を進めることも構想の狙いの1つだ。ICTを導入することで学習評価や成績処理といった教員の仕事を省力化する。同社はデータビジュアル化ツールの「Power BI」などを使って出欠状況を把握したり、アンケート作成ツールのFormsを使って採点をしやすくしたりするといったソリューションも紹介。「働き方改革を進めれば、教員は空いた時間を指導法の研究や児童・生徒との対話にもっと当てられるようになる。働き方改革と教え方改革は両輪だ」と中井業務執行役員は語る。