全6248文字

ローコード開発はシステム開発のスピードを高める。ではその「速さ」を先進ユーザー7社はどこに生かしているのか。見えてきたのは「事業継続」と「業務品質の向上」、「ビジネスへの即応」の3つだ。

図 ローコード開発に取り組むユーザー企業の例
図 ローコード開発に取り組むユーザー企業の例
システム基盤からワークフローまで適用範囲広がる
[画像のクリックで拡大表示]

コロナ禍での業務継続
ロイヤルホールディングス、SUBARU

 新型コロナ禍は外食産業にひときわ大きな打撃を与え、多くの飲食業が店舗の休業や営業時間の短縮を余儀なくされた。外食チェーンを展開するロイヤルホールディングス(HD)も例外ではない。レストラン「ロイヤルホスト」も店舗により休業や時短営業せざるを得ず、2020年のゴールデンウイーク期間中には全220店舗で店内飲食を休止、テークアウトのみに切り替えた。

 それでも従業員の生活を守る必要がある。同社は休業手当を支払うために必要となる事前情報を、従業員から収集するシステムを急ぎ開発。2020年4月に要件定義を始め、5月半ばに本番稼働させた。1カ月あまりでのリリースだ。これにより、ロイヤルグループ約2万人の情報を迅速に収集できた。

図 ロイヤルホールディングスにおける開発基盤の変遷
図 ロイヤルホールディングスにおける開発基盤の変遷
新型コロナ対策で新システムを1カ月間で開発
[画像のクリックで拡大表示]

 短期開発を支えたのはキヤノンITソリューションズのローコード開発プラットフォーム「Web Performer」だ。「(製品選定に当たり)複数社を比較検討し、開発体制や開発プロセスなどから総合的に判断してWeb Performerに決めた。キヤノンITソリューションズが職場内訓練(OJT)で開発手法を当社に伝え、開発ルールを一緒に作ってもらえたのは結果的に良い方向に働いた」。ロイヤルグループのシェアードサービスを担うロイヤルマネジメントでシステム部システム企画課に所属する中島美雪氏は2015年当時の製品選定をこう振り返る。

 ロイヤルHDは2010年まで米IBMのグループウエア「Lotus Notes/Domino(現HCL Notes/Domino)」上で開発した約300のアプリケーションを運用していた。サポート終了を機に2010年ころ、どのアプリを存続させるかを絞り込んだうえで、グループウエアのアプリを米グーグルの「Google Apps(現G Suite)」に、それ以外のアプリをクラウドベースのあるワークフロー開発基盤にそれぞれ移行した。

 ただ一部アプリはセキュリティー上の都合などからNotes/Domino上に残った。開発基盤を統一したいという思いと、保守開発を外注していたため改善要望に応え切れていないという事情から、Google Apps以外の全アプリをWeb Performerに移行すると決めた。

 開発が容易になったことからWeb Performerに移行すると内製化が進んだ。ロイヤルマネジメントは2人の専任開発者を育て、その1人が中島氏だ。

 ただ中島氏が所属するシステム企画課はグループ各社のニーズに応えて業務を効率化するシステムを企画するのが本来の業務。それでも「保守開発だけでなく新規開発もある程度社内で担えるようになり、素早く会社に貢献できるようになった」(中島氏)。

 事実、冒頭のシステムは中島氏らが開発した。今後はWeb Performerで事務処理のデジタル化を進め、「紙のための出社」撲滅を目指す方針という。