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 デジタルの力で事業モデルを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため、多くの企業が新規システムの開発に乗り出している。従来の会計や販売、生産管理といった基幹系システムだけでなく、データ分析やAI(人工知能)を活用したシステムなどの開発に着手している。

 データ分析やAIシステムを開発するためには、従来の基幹系システムとは異なるプログラミング言語を選ぶケースが少なくない。プログラミング言語によって向いているシステム、または向いていないシステムがあるからだ。ITエンジニアには開発対象に応じて利用する言語を増やしたり、場合によっては切り替えたりすることが求められる。

 では、2021年にITエンジニアが利用するプログラミング言語や開発環境は何か――。実態を調べるため、日経クロステックはWebアンケート「プログラミング言語利用実態調査2021 夏」を実施。調査期間は2021年5月31日~6月23日。455人から回答を得た。

C/C++やJavaより利用が進む

 アンケートでは、現在使っているプログラミング言語を3つまで挙げてもらった。その結果、利用言語の第1位は「Python」だった。回答者455人中151人が利用している。3割以上のエンジニアがPythonを何らかの業務に使っているという結果が得られた。

図 利用しているプログラミング言語(N=455)
図 利用しているプログラミング言語(N=455)
PythonやJavaScript、C/C++を使うユーザーが多数
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 Pythonはデータ分析やAI関連といったシステム開発に利用する機会が多い。こうしたシステム開発に利用できるライブラリーやフレームワークが豊富に存在するからだ。企業がDXを推進するには、データ分析システムやAIシステムが欠かせない。多くの企業がDXに取り組むなか、Pythonの存在感が増してきていると言える。

 利用言語の第2位は「JavaScript」(128人)だった。JavaScriptはWebシステムやWebアプリケーションのクライアント側(Webフロントエンド)開発に多用されるプログラミング言語である。第7位にはWebサイトなどを構築するHTML/CSSが入った。最近のシステム開発では何らかのWeb技術を利用することが多い。こうした背景からJavaScriptが上位に選ばれたと思われる。

 第3位は「C/C++」(125人)である。C/C++は1970~1980年代と登場時期こそ古いものの、組み込み系ソフトの開発でいまだに多用される言語だ。自動でメモリー管理を行うガベージコレクションといった仕組みはないが、人手で明示的にメモリー管理できる。限られたコンピューターリソースを効率良く使わなければならない組み込み系エンジニアに人気があり、第3位に入った。第4位は「Java」(100人)、第5位は「C#」(97人)だった。これらは基幹系システムの開発で多用される。

メインに利用する言語も「Python」

 先ほどの回答は利用しているプログラミング言語を複数(3つまで)聞いた結果だ。その中で業務に主に使っている言語があるはずだ。そこでアンケートでは最も使っている言語を1つだけ挙げてもらった。

 第1位は利用言語と同じ「Python」(15.8%)である。第2位は「C/C++」(14.7%)、第3位は「Java」(12.7%)だった。先ほどの利用している言語で第2位だった「JavaScript」は第8位に後退している。現在のシステム開発にはWeb技術を用いるが、JavaScriptを利用するのは一部のためメインの言語には選ばれなかったと推測できる。

図 最も利用しているプログラミング言語(N=455)
図 最も利用しているプログラミング言語(N=455)
Pythonが第1位、JavaScriptは後退
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 Pythonは2020年に実施した調査よりも多く新規システムの開発で利用されている。最も利用している言語で開発するシステムが新規システムかどうかを聞いたところ、211人のエンジニアが「新規開発」と回答した。その中でPythonを利用しているエンジニアの割合は19.0%である。2020年に実施した調査結果と比較すると、「Python」と「C/C++」、「R」「VB.NET」といった言語を利用するエンジニアの割合が増えている。PythonやRはデータ分析システムやAIシステムを新規開発するのに利用される。こうしたシステムを開発するエンジニアが増えていると思われる。

図 新規開発に利用するプログラミング言語(N=455)
図 新規開発に利用するプログラミング言語(N=455)
PythonやC/C++、VB.NETを利用するエンジニアが増加傾向
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