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在宅勤務は社員の命を守る手段として今後も継続が求められる。ただし、緊急に導入したため在宅勤務の環境はまだ十分とは言えない。ウィズコロナ、アフターコロナ時代の働き方を確立するため4つの観点で見直しが必要だ。

 「新型コロナウイルスの感染防止対策として企業が取り組んできたテレワークは2019年以前の施策とは違い、社員の命を守る取り組みの1つという位置付けになった。企業は長期にわたりテレワークを継続し、社員を支援することが欠かせない」。社会経済の生産性に関する調査研究を手掛ける日本生産性本部生産性総合研究センターの柿岡明上席研究員はこう指摘する。

命を守る策と位置付けるべし

 2020年5月、柿岡上席研究員は20歳以上のビジネスパーソン1100人を対象に「第1回 働く人の意識調査」を実施した。その結果、時差出勤を含む「柔軟勤務」やテレワークの実施など社員の命を守る取り組みをした企業は、そうでない企業と比べて社員が会社に抱く信頼度が高いと分かった。

図 日本生産性本部が2020年5月に実施した「第1回 働く人の意識調査」の結果の一部
図 日本生産性本部が2020年5月に実施した「第1回 働く人の意識調査」の結果の一部
社員の命を守る策を講じる企業への信頼度は高い(データ提供:日本生産性本部)
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 「テレワーク実施あり」の企業で働く人のうち「勤め先を信頼している」と答えた人の割合は20.8%。テレワーク未実施企業で働く人に比べて5.9ポイント高かった。柔軟勤務についても結果は同じ傾向だった。

 企業が今後もテレワークをはじめとする社員の命を守る策を講じなければ、会社に対する社員の信頼度は下がり、それが離職にもつながる可能性がある。「生産性が高い人材を増やしていくためにも、企業が社員と信頼関係を築いていくことが大切だ」と柿岡上席研究員は述べる。

リアル勤務の良さを補うべし

 テレワークを継続して進めていくためには「社員が仕事上の課題を解消できて、スキルアップにもつながる」と思える環境作りが必要になる。「テレワークでは、出社して職場で働く場合に比べて、コミュニケーションを気軽に取りづらい。職場ではそれとなく見聞きしていた学びにつながる情報も入ってこなくなっている」とリクルートワークス研究所の石原直子人事研究センター長は説明する。

 先輩や同僚の動きから学べた仕事の効率化のコツや、上司への報告や相談のタイミングはテレワークではつかみにくい。上司と部下が1対1で面談するワン・オン・ワン・ミーティングだけでは、仕事の進め方など緻密なフォローは難しいという。

図 リクルートワークス研究所が考えるテレワーク時に顕著になるスキルアップ面の課題と解決策
図 リクルートワークス研究所が考えるテレワーク時に顕著になるスキルアップ面の課題と解決策
自律的に働くスキルを学べる環境をバーチャルで再現
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チャットで悩みと解決策を共有

 そこで石原センター長が提案するのが、ビジネスチャットの中に共有グループを設けたうえで、そこに若手が直面した課題や相談事を書き込んでもらうというやり方だ。解決策などを上司や同僚が答えていくことで、社員は課題をクリアしてスムーズに仕事を進められる。「周囲の社員も書き込み内容から仕事の仕方を学べる。上司もミーティングだけに頼らず人材育成ができる」(石原センター長)。

 こうした施策の効果を高めるポイントが3つある。まずは心理的安全性の確保だ。ちょっとした課題や相談を書き込んでもダメ出しされないようにすることなどを指す。相談の回答の書き方にも注意が必要だ。「他人が読んで、怒っている印象を持たれないようにテキストによるコミュニケーション力を高めることが大切」(石原センター長)。

 第2のポイントは書き込まれた課題などに対する解決策や関連した情報の書き込みを周囲に促すことだ。中堅社員に自らが持っているノウハウを書き込むよう勧めたり、ノウハウの提供を人事評価に結びつけたりする。

 最後のポイントは相互信頼感の醸成だ。上司と部下の間で「頼んだ仕事は期限通り、期待した品質で仕上げてくれる」といった信頼感を高めることを指す。仕事を任せる際、成果物の完成イメージや完成度のレベルを擦り合わせておくとよい。