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スタートアップ振興にかじを切った政府や財界だが、足元の現状はあまりに心もとない。起業は職業の選択肢として縁遠く、スタートアップ全体のすそ野は広がりを欠く。創業や成長に不可欠なリスクマネーの規模も、海外に比べて大きく見劣りする。

スタートアップワールドカップ日本予選でプレゼンする登壇者(右下)、日本代表には空飛ぶクルマを開発するSkyDriveが選ばれた(写真:村田 和聡)
スタートアップワールドカップ日本予選でプレゼンする登壇者(右下)、日本代表には空飛ぶクルマを開発するSkyDriveが選ばれた(写真:村田 和聡)
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 「日本予選チャンピオンはSkyDriveです!」。2022年7月21日、東京・六本木。スタートアップ企業のピッチ(事業計画披露)コンテスト、「スタートアップワールドカップ2022日本予選」の会場は、熱気にあふれていた。

 200社あまりの応募企業から選抜された10社によるピッチを勝ち抜いたのは、電動の個人向け乗用ドローン、いわゆる「空飛ぶクルマ」を開発するスタートアップのSkyDriveだ。「ヘリコプターに比べて静かで安価で省電力。様々な企業が空飛ぶクルマの開発に取り組むなか、2025年に発売するのは日本では当社だけだ」。同社の福沢知浩最高経営責任者(CEO)は自社の優位性と社会的意義を力説した。

シリコンバレーと世界をつなぐ

 「様々な国のスタートアップに投資してきて感じるのは、途上国と米シリコンバレーをつなぐ手段がないこと。ならば私がつくろうと思い立った」。こう語るのは、スタートアップワールドカップ創設者のアニス・ウッザマン氏だ。同氏は運用総額2600億円のベンチャーキャピタル(VC)ペガサス・テック・ベンチャーズのCEOを務める。

 シリコンバレーに本拠を構え、2012年から日本企業にも投資をしてきたウッザマン氏は、日本を含む世界各国・地域のスタートアップとシリコンバレーのVCをつなげる機会として同大会を創設。2017年に第1回大会を開催し、今年で4回目だ。シリコンバレーにほど近いサンフランシスコで決勝大会を開いてきた。

 当時も今回も、選考基準は技術力や事業性に加えて「社会課題の解決への貢献度」(ウッザマン氏)。身近で手軽な空の移動手段を提供し、都市や地方の交通問題の解決につなげるSkyDriveの事業は、まさに選考基準通りと言える。

 第1回大会の世界チャンピオンは日本代表として参加した園児見守りサービスのユニファ。当時の参加国は30数カ国だった。回を重ねるごとに参加国数は増え続け、2022年大会は世界70カ国・地域で予選を開催し、合計で100カ国からスタートアップが集った。第2回と第3回、日本勢は優勝を逃している。「本気で優勝を狙う」。2022年9月の決勝大会へ、SkyDriveの福沢CEOは意気込む。