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 新型コロナ対策を機に、AIなどを使った創薬が一気に加速しそうだ。この「AI創薬」を後押しするのが性能世界1位を誇るスーパーコンピューター「富岳」である。富岳は理化学研究所と富士通が共同開発した。

理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピューター「富岳」(写真提供:理化学研究所)
理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピューター「富岳」(写真提供:理化学研究所)
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 新型コロナ対策として、理研などは富岳を1年前倒しして2020年春から運用を始めた。ここで治療薬発見に乗り出したのが、かねてシミュレーションや機械学習などを用いたAI創薬の研究に取り組んできた京都大学大学院医学研究科の奥野恭史教授らである。

 新型コロナウイルスの4つのたんぱく質について、親和性と治療効果を持つと期待できる治療薬の候補を探すため、富岳を使った分子シミュレーションの実験に着手した。分子の3次元構造の動きや相互作用をコンピューターの中で再現するシミュレーションである。新型コロナウイルスのたんぱく質と、抗ウイルス薬など既存の医薬品とがどう結合するかをシミュレーションして、結合の強さなどを割り出し、治療薬として効果がありそうなものを見つけ出そうという試みだ。

 奥野教授らはこれまでに、新型コロナウイルスが持つ「Main protease」と呼ぶたんぱく質との結合を、既存医薬品2128種の全てについて富岳でシミュレーションした。結果、効果がありそうな2種の医薬品を見つけた。

 富岳はまだ本稼働ではなく使える時間も限定されているうえ、アプリケーションの調整も完全ではない。今回は計算に10日かかったが、「調整が済めば1~2日で計算が終わる」(奥野教授)。残る3つのたんぱく質のシミュレーションも今後計画している。