フランスが起業大国として躍進している。その原動力はコミュニティ作り。今注目の仏コミュニティの正体とは。
共通するビジョンのもとでパリを中心に世界の都市に点在するスタートアップ企業を束ね、バーチャルなコミュニティを形成する「都市横断型コミュニティ」こそ、フランス流の特徴だ。各国ごとの規制や販売チャネルの情報も融通し、世界の市場を目指す。パリを拠点にフランス発・世界行きを目指すいくつかのコミュニティを紹介しよう。
Hello Tomorrow 世界の難題を技術で解決
Hello Tomorrowは2011年に設立されたNPO法人だ。環境や資源、医療といった世界的な難題を科学技術の力で解決する「Deep Tech(ディープテック)」を手掛けるスタートアップ企業のコミュニティを運営する。
フランス、ブラジル、インド、パキスタン、日本など12カ所に拠点を持つ。「Deep Techのスタートアップは世界に点在している。こうした企業のコミュニティを作り、イベント開催などを通じてプロモーションする」(Hello Tomorrow共同創業者のアルノー・ド・ラ・トゥール氏)。
コミュニティに参加するスタートアップ企業は約500社に上る。パリで開催する年1回のイベント「Global Summit」、起業コンペ「Global Challenge」、科学者にビジネスマインドを教え起業家として育成する「Deep Tech Founders」などの活動を展開している。
スポンサーである大企業とスタートアップのマッチング支援も実施している。大企業とスタートアップの文化の違いを緩和し、大企業のチームがスタートアップの経営スピードについて行けるよう、アジャイル開発のトレーニングも提供している。
Hello TomorrowにはDeep Techという難題解決のビジョンに共感するユニークな企業が集まっている。例えば水道IoT基盤のシティータップスは、アフリカの都市など水道インフラが成熟していない地域向けにスマートメーターを開発、販売している。モバイル決済などで水道使用料を支払った分だけオンデマンドで水を利用できる。水道企業にとっても料金を確実に徴収でき、かつ徴収コストを大幅に減らせる利点がある。