電子メールの代わりにチャットを導入する企業が増えている。具体的にはどんなツールがあるのか。業務で使えるビジネス向けチャット製品を見てみよう。
「新人事制度に、日次での業績共有、採用活動の見直しなど新たな経営施策を現場に定着させることができたのはチャットのおかげだ」。お好み焼きチェーンなどを展開するぼてぢゅうグループの栗田英人社長はチャット導入の成果をこう語る。
同社はアルバイトを含む全従業員を対象にチャットを導入した。勤務シフトの調整など組織内で発生する「報連相」(報告・連絡・相談)に利用している。ぼてぢゅうグループの店舗にはPC操作になじみの薄いアルバイトも多い。電子メールではなく、主婦や若者が普段から使い慣れているチャットを業務連絡の手段として使うのは同社にとって自然な流れだった。
外部プログラムと連携して対話
チャットはテキストや写真などを対話形式でリアルタイムに送受信するツールである。「LINE」に代表されるように個人向けの印象が強いが、セキュリティや利用者の管理機能を強化したビジネス向けサービスが続々と登場しており、企業への導入が進んでいる。
チャットは電子メールと比べて、話題ごとに投稿を整理しやすい。投稿までの手間が少なく済む利点もある。これらに加えてビジネス向けのチャットには電子メールにはないもう1つの強みがある。外部サービスやシステムとの連携が容易な点だ。
ぼてぢゅうグループは海外店舗との連絡にもチャットを使っている。その際、投稿したメッセージ内容を翻訳する外部サービスを介して対話できるようにした。例えばベトナム人の店舗スタッフと栗田社長ら本部スタッフが、お互いの母国語のまま店舗運営について議論できているという。電子メールでなくビジネスチャットだからこそ実現できたといえる。チャットと連携する外部サービスを「チャットボット」と呼ぶ。人に代わってチャットをするプログラムであり、対話の相手を人以外に広げる。
電気設備工事大手の九電工は工事現場でチャットの利用を進めている。作業前の安全確認から安全巡視、作業員の熱中症予防まで、工事現場で取り扱う紙の書類は頻繁に使うものだけでも数十種類に上る。これらの書類作成の手間を減らすため、同社は人と書類作成業務をつなげるチャットボットを開発した。
チャットボットが投げかけた質問に対して作業者がチャットで回答するだけで書類がサーバー側で自動生成される。同社は車両運行管理など4種類の書類を自動作成するチャットボットを稼働させた。
導入を指揮した先端技術開発グループの本岡信人マネージャーは「従来は確認・点検をしては書類に書き込み、回収して保管する一連のルーチン作業が負荷になっていた」と語る。導入効果を評価しながら、適用領域を広げる方針だ。