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配車アプリから半導体、自動運転、金融、医療、衛星通信、農業、鉱山開発まで――。孫正義氏が率いるソフトバンクグループと10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資先は一見するとバラバラであり統一感が全くない。出資先への取材を基に孫氏の目利き力を検証する。

 10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などが出資する異色の3社。各社のCEOが日本メディアの取材に初めて応じ、事業構想を明かした。早速見てみよう。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどが出資する海外3社
企業名業種出資額
米ワンウェブ衛星通信10億ドル
カナダ ネマスカ・リチウム鉱山開発7800万ドル
英インプロバブル・ワールズVR/AR開発5億ドル

米ワンウェブ

全世界をカバーする通信衛星を量産

 高度1200キロメートルの低軌道に重量150キログラムの超小型人工衛星を900基打ち上げて「衛星コンステレーション」を構築し、衛星通信を使ったインターネット接続を世界中で提供する――。

図 ワンウェブの衛星網の概念図
図 ワンウェブの衛星網の概念図
超小型衛星900基が地球をカバーする
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 ソフトバンク・ビジョン・ファンドが10億ドルを出資した米国の通信会社ワンウェブは、1兆個のデバイスをインターネットにつなげる孫正義氏の野望を叶えるために欠かせないピースを提供する。そのピースとは、全世界をカバーする安価な通信網だ。

 「月収が2ドルしかない発展途上国の人々に、高速なインターネット接続を提供する」。ワンウェブ創業者のグレッグ・ワイラーCEO(最高経営責任者)はこう意気込む。

 「インテルサット」や「イリジウム」など過去の衛星電話サービスは、企業や政府機関、富裕層などを対象にしていた。利用料金が高額なうえ、サービスを利用するには高価な専用端末を購入する必要があった。

 それに対してワンウェブは、消費者を含め多くの人々や組織が利用できる安価で手軽な通信サービスの実現を目指している。サービスは通常のスマートフォンなどから利用可能で、専用端末を購入する必要はない。

毎秒2.5ギガビットの通信が可能

 ワンウェブは2018年後半に最初の人工衛星10基を打ち上げる計画だ。2020年までにその数を700基に増やし、全世界で衛星通信を利用できるようにする。人工衛星と直接通信するのはヘルメットほどのサイズの地上用ターミナル(基地局)。この地上用ターミナルを介してLTEや3G、Wi-Fiなどを使ったモバイル通信を可能にする。

 2019年に米アラスカ州、2020年にサウジアラビアで商用サービスを開始する。通信速度はサービス開始当初は下りが毎秒200メガビットで上りが毎秒50メガビット。2021年までに通信衛星の数を900基以上に増やすと下りは毎秒2.5ギガビットと「光ファイバーを使うよりも高速な通信ができる」(ワイラーCEO)。

 最終的には人工衛星の数を2000基以上に増やす計画だ。人工衛星の数が増えるほど通信速度や帯域が向上する。ワイラーCEOは「2027年までに発展途上国を含むあらゆる人々がインターネットを利用できるようにしてデジタルデバイド(デジタル格差)を解消することが我々のミッションだ」と力を込める。

 人工衛星はワンウェブが自社で設計し、エアバスと提携して生産する。米フロリダ州に2018年内に開設する工場では、週に15台の人工衛星を生産する。「人工衛星の大量生産は世界初だ」(同)とする。

図 ワンウェブが欧州エアバスと設けた工場
世界初の人工衛星量産拠点だ
図 ワンウェブが欧州エアバスと設けた工場
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ソフトバンクは40億ドルの支払い

 「世界中でインターネット接続が利用できるようになることで、数兆ドル規模の経済効果が生まれるだろう」。ワイラーCEOはそう語る。「現在、世界の人口の50%がインターネットにアクセスできていない。30億人を超える人々がインターネットを利用可能になれば、インターネットユーザーの数は現在の2倍になり、インターネット上のビジネス規模もそれだけ大きくなる」(同)。

 ワンウェブは先進国もターゲットとしている。「普段は光ファイバーなどケーブルを使ったインターネット接続を利用している企業が、衛星通信を予備回線(セカンドソース)に採用すれば、災害発生時でも途切れることのないインターネット接続環境を得られるだろう」(ワイラーCEO)。

 ワンウェブの衛星通信網が稼働したら、それをバックボーンにソフトバンク自身が世界中で携帯通信サービスを提供する可能性がある。ソフトバンクは2018年5月に公表したアニュアルレポートで、同社がワンウェブに対して通信サービスの利用料として最低でも40億ドルを支払うコミットメント(約束)をしていると明らかにしているからだ。

 「ワンウェブは近い未来に世界で最大の人口を抱えるアフリカ大陸をカバーする通信事業者になる。つまり我々は世界最大の通信事業者になるのだ」。ワンウェブのワイラーCEOはそう力説する。その野望は孫正義氏も共有している。